トランプ感染後、断食で祈ったインド人の末路 トランプを神とあがめ、自宅に銅像もつくった

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トランプ氏はインドの都市部に住むインテリ層からは嫌われ、ソーシャルメディア上でもからかいネタの定番になっているが、インド国民一般からは幅広い支持を得ている。アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターが2月に行った調査によると、調査対象となったインド国民の56%がトランプ氏なら「国際問題で正しいことをしてくれる」と回答。2016年にトランプ氏が大統領に選ばれた時点と比べても、そう考える人が16%増えている。

実はインドにおけるトランプ人気には、かなり重要な意味がある。というのは、「アメリカ・ファースト」がアメリカを輝かしい未来に導くと豪語する厚かましくも高圧的なトランプ流のカルト政治は、インドのモディ首相が人気取りのために取り入れたイメージ戦略と重なる部分が大きいからである。

始まりは夢に現れたトランプのお告げ

インド南部のテランガーナ州にあるコニーという村で農民として暮らしていたクリシュナさんは妻に先立たれ、年齢は30代。4年ほど前に、トランプ氏の熱狂的な信者になった。

親族らの話では、トランプ氏が夢に現れたことがきっかけだそうだ。夢に現れたトランプ氏は、翌日行われるクリケットの試合でインド代表チームが宿敵パキスタンを打ち負かすと予言。インドは予言どおりに勝利した。

クリシュナさんは「この日からトランプ氏を崇拝し始めた」と、いとこのヴィヴェークさんは語る。「ちょっと頭がおかしくなっただけだろう。最初は家族の誰もがそう考えていたが、崇拝は続いた。やがて家族も、彼のトランプ信仰を認めるようになった」。

クリシュナさんは指導者としてのトランプ氏を激賞していた、とインド南部の都市ハイデラバード近郊に住む25歳のヴィヴェークさんは述懐する。近所の住民はアメリカ政治をよく知らず、トランプ氏についても何の意見も持っていなかった。が、クリシュナさんがあまりにも熱烈なファンだったため、少し奇妙な感じはしたが、ご近所さんに対する礼儀としてクリシュナさんのトランプ崇拝を受け入れていたという。

ヴィヴェークさんによると、トランプ氏に対する信仰心が強まっていくにつれ、クリシュナさんは毎週金曜日に断食を行うようになり、ついには等身大のトランプ像をまつった祠(ほこら)を裏庭にあつらえた。クリシュナさんはヒンドゥー教のしきたりにのっとり、ヒンドゥー教の寺院でクリシュナやシヴァ、ガネーシャといった神々に祈りをささげるのと同じように、毎朝1〜2時間かけてトランプ像を拝んだ。

ネット上で広く拡散された動画には、トランプ氏の写真が置かれた祭壇の前でクリシュナさんがプージャーと呼ばれる礼拝を行う様子が映っている。別の動画には、白文字で「TRUMP(トランプ)」と書かれたTシャツを着たクリシュナさんが、赤いネクタイと摘みたての花で作られた首飾りを身に着けて親指を立てたポーズをとるトランプ像を、水で清める模様が収められている。

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