「ビジネスで必要な読解力」がない人の根本原因 名文を読んで学ぶだけでは限界がある

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●悪い例1(具体例がだらだらと続く文章)​
S社を訪問しましたが、無人の受付口にタブレットが設置されており、そこで行き先をタッチすると担当者が応答するようなシステムでした。
担当のSさんと専用のブースで二人で商談しました。Sさんはタブレットを手にして、打ち合わせ内容を打ち込んでおられました。
タブレットに打ち込んだ内容はほかの担当にも共有されていたかもしれません。30分ほど打ち合わせをした後、電車で帰社しました。
途中、遅い昼食をとりましたが、私が会社に到着したところ、先方から前向きに考えたいという返事がすでに届いていました。

この文章を読んで、多くの人が「何を言いたいのだろう?」と首をかしげるに違いない。

なぜそうなるのか。ここには具体的な事柄が続くばかりで、抽象化がなされていないからだ。抽象化した事柄が入らなければ、いわゆる「オチのない話」になってしまう。この文章はまさにその典型だ。

意識的に抽象化してみる

このような文章の場合、読み手としては、書き手が抽象化を怠っていることをしっかりと認識し、意識的に抽象化してみる。その場合、具体的な内容を手掛かりにして、書き手は何を言いたくて具体的な事柄を示しているのかを類推するわけだ。

そうすると、「無人の受付口にタブレット」「行き先をタッチすると担当者が応答するようなシステム」「Sさんはタブレットを手にして、打ち合わせ内容を打ち込んで」「タブレットに打ち込んだ内容はほかの担当にも共有」「返事がすでに届いていました」というように、訪問先のIT環境と手際の良さに注目していることに気づくはずだ。

要するに、この文章が言おうとしているのは、どうやら、「S社を訪問しましたが、大変機能的に動いている会社だという印象を受けました」ということのようだ。書き手は、そのことを最初か最後に示すべきなのだが、文章を書き慣れていないためにそれを怠っているのだろう。

意識的にこのような書き方をしたのではなく、このような書き方しかできない人は、抽象化の苦手な人である場合が多い。理論的にものを考えずに、その場その場で相手に対応しようとするのだろう。このような文章から、その点を読み取る必要がある。

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