原油はやっぱり1バレル=30ドル割れを試す

今のままでは、いずれ価格は下落の方向に

さすがにここへきて頭打ち感が出てきたとはいえ、夏以降相場が現在の高値近辺で比較的安定して推移してきたのは事実だし、産油国の間に危機感がさほどないのも間違いないところだ。

自分たちの生産動向が大きく市場に影響せず、価格が動かないのではあれば、少しでも生産を増やして石油収入を得たいと考えるのが自然なところ。ましてやOPECのリーダーであるサウジが生産を増やしている状況下では、減産遵守が徹底されなくなるのは、当然の流れだ。

だが需要が低迷する一方で、生産が増えているのだから、需給はこの先改めて緩んでくることになる。しばらく取り崩し傾向が続いていた在庫も、この先も積み増し圧力が強まり、新たな売りを呼び込むきっかけとなることも考えられよう。

今のところは株価が高止まりを続けていることが下支えとなっているが、この先景気支援策の協議が不調に終わるなどして景気の先行きに対する懸念が高まり、株価が本格的な調整局面に入ってくることがあれば、WTI原油が1バレル=30ドルの節目を割り込むまで一気に値を崩すことがあっても、何ら不思議ではない。

価格急落なら、さすがにOPECプラスの減産再強化も

ただ一方で、8日にサウジが「来年初めから予定されているOPECプラスの減産幅縮小計画の見直しを検討している」と伝わったことには、注意が必要だ。

OPECプラスは、2020年4月に開かれた会合で、2018年10月の生産量を基準に参加国がそれぞれ生産を23%ずつ減少させ、実質的に日量960万バレルという歴史的な大幅減産で合意した。だが、実はこれには条件が付いていた。7月からは減産幅を日量770万バレルに、さらに2021年1月から2022年4月末までは日量580万バレルと、段階的に減産幅を縮小するというものだ。

このうち第1弾の770万バレルへの減産幅縮小は、予定より1カ月遅れで8月から実施され、ここまでの生産増加の背景となっている。そして来年1月からはさらに減産幅が縮小、実質的に1190万バレルの増産が行われることになっているが、さすがにサウジは今後の市場の状況次第では、この計画を見送るべきだと考えているようだ。

夏までの時点では、サウジも需要が順調に戻ってくるとの楽観的な見通しを基に、7月からは自国の割り当て枠を超えて自主的に行っていた日量100万バレルの追加減産を中止、8月以降もその方向に沿って生産を増やし続けてきた。だが、需要が当初の予想ほど回復してこない可能性が高まったことから、改めて減産の必要性を感じ始めているのかもしれない。

今のところ産油国の間には、まだ楽観的な雰囲気が漂ってはいるものの、この先価格が急落することがあれば、様相も一変するはずだ。OPECは11月末に次回の定例総会を開くが、その際に来年以降の減産幅縮小の見送りが合意されることは十分にありうるし、場合によって減産を改めて強化することがあっても不思議ではない。

今後も需要が低迷するのは避けられなくても、OPECプラスの大幅な減産によって供給が落ち込むのなら、世界需給は再び引き締まることになり、相場の大きな押し上げ要因となる。現時点ではまだまだ不透明な部分が多いが、OPECの動向は、結局原油価格次第という部分が多いのも事実。もし11月半ばあたりまでに30ドル台前半から30ドル割れを試すような場面が見られれば、そこが大きな買いのチャンスになると受け止めてもよいかもしれない。

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