「六本木の高級ステーキ」運ぶタクシーの懐事情 収入減ったドライバーたちの救済策となれるか
みんなのタクシーの橋本洋平モビリティサービス部部長は、「タクシーは、発送先と店舗の距離が離れていても、迅速かつ荷崩れなしに配送できるのが強みだ。またタクシーを日常的に利用するような資金力のある人と高級志向なタク配サービスは親和性が高く、同サービスのリピーターも多い」と自信を見せる。
こうして、コロナ禍における期間限定の特例措置として認められていたタク配は、「利用者と事業者の双方から好評であり、安全上の問題も生じなかった」(赤羽一嘉国土交通大臣)ことから、恒久的な制度として確立されるに至った。
10月以降の制度でタクシー事業者は、安全運行の管理などを担う貨物の運行管理者を、新たに確保しなければならない。また、最低保有車両台数が設定されるうえに、貨物配送向けの任意保険に原則加入しなければならない、などの規制も受ける。
ドライバーの売り上げは2~3割減
それでもタクシー業界が延長を求めたのは、旅客運送という「本業」が依然として厳しいからだ。全国ハイヤー・タクシー連合会が実施したサンプル調査によれば、8月の営業収入は前年同月比40.4%減(全国平均)と大きく落ち込んでいる。
緊急事態宣言発令直後で、利用者数が前年同月比で6割減となった4月や5月から回復傾向にはあるものの、依然として苦境が続く。日本交通の野村貴史管理部副部長は、「在宅勤務や飲食店の営業時間短縮などで、深夜帯を中心にビジネスパーソンの利用が減っており痛手となっている」と話す。
タクシー大手である国際自動車の原龍介タクシーグループ推進課リーダーは、「1日当たり5万~6万円程度あったドライバーの売り上げも、今や4万円前後にまで減っている」とこぼす。同社の田中慎次タクシーグループ推進課シニアマネジャーは、「コロナ禍の影響が残るなか、売り上げが例年比で8割を超える水準に戻るとは考えられない」と語った。
タクシー業界の給与の多くは歩合制であり、客数の減少はドライバーの収入減に直結する。事業者側も、コロナ禍で落ちこんだドライバーの売り上げを少しでも補填するため、タク配に参入している。「商業施設や百貨店など飲食店以外からの問い合わせも来ている」(日本交通の木村氏)と、タク配の引き合いは広がりを見せている。
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