今回、ボッシュのARASを装着したプロトタイプ車両(試作車)にテストコースで試乗することできた。
試した機能は、①ACC、②衝突予知警報、③死角検知の3つ。①のACCは前述した通り、前走車に追従する機能。②の衝突予知警報は、前走車との衝突可能性が高まった場合、ライダーにブレーキ操作や回避動作を促す機能。③は自車後側方から迫る車両を検知して、自車の車線変更を抑制する機能。
①はシステムがアクセルとブレーキの操作を部分的に行うことで追従走行を行う。試乗車はクラッチ操作の必要なマニュアルトランスミッション車だったので、完全停止までは対応せず稼働下限速度は約30km/h。システムによるアクセルとブレーキの操作は滑らかで、冒頭のニーグリップさえしっかり行っていれば信頼感の高い走行環境が手に入る。
世界初の搭載車は11月にお披露目
一方で、②と③はセンサーが察知した危険な状態をメーター内のディスプレイ表示などで知らせてくれる限定的な機能。仮に衝突が避けられない状態であってもシステムによるブレーキ操作は行わない。
ライダーが車体と一体となって走行する2輪車の場合、ライダーが意識していない状況でのシステムによる自動的なブレーキ操作は車体の安定性を損ない、最悪の場合、それが元で転倒してしまう可能性があるからだ。よってブレーキ操作はライダーが行うべきものとして最後まで残されている。
2020年10月、イタリアのドゥカティは、ボッシュのARASを搭載した世界初の2輪車「ムルティストラーダ V4」の生産を開始、11月には正式発表する。オーストリアのKTMも2020年中にはARAS搭載車を発売し、ドイツのBMWモトラッド(BMWの2輪車部門)も搭載を決定。そして2021年には、日本のカワサキが搭載車を発売する。
フルブレーキまで行う4輪車の先進運転支援システム「ADAS」と単純比較すれば、ブレーキ操作を行わない2輪車のARASは心許ない、そんな意見もあるだろう。
しかしライダーにとって、迫り来る危険が前もって知らされることは、確実なブレーキ操作や回避動作に直結するため、大きな安心と安全を手にしたことと同義だ。筆者は、アメリカのSAEインターナショナルによる自動化レベル1に準拠したこうしたARASの早期普及を応援したい。
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