神戸の小学校PTA「上部団体離反」に見えた綻び コロナで旧態依然の仕組みにメスが入り始めた

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関係者が再現したPTA役員を決める際のくじ引き。割り箸を使い、ラップの芯のような筒に差してひくことが多いという

PTA協議会の退会についても、

① 講演会や研修会への「動員」がなくなる
② 会長らが出席する会議を減らすことができる
③ 会費負担をPTA本来の仕事で使うことができる

といったメリットがある一方、デメリットとして具体的に挙げられたのは、協議会が運営する自転車事故などに備える子どもの保険に入ることができなくなることだけだった。

先述した神戸の保険はPTA活動中の事故に対応するものだが、この保険は、子どもが日常生活を送る中で発生する事故などに備えるものだ。近年、埼玉県をはじめ自転車保険を義務化する条例を制定する自治体が増えてきた。これを受けて、自転車保険への対応を呼びかけながら加入を促している。

しかし、自転車事故にも対応する日常生活賠償は、自動車保険や火災保険などの特約を探せば、家族全員を対象に年間2000円程度の負担で加入することができる。クレジットカードや携帯電話会社など、月々の支払いがあるサービスでも比較的安価に加入できる。

「得られるものより保護者の負担が大きい」

こうしたことを踏まえて、大谷場東小PTAは「得られるものより保護者の皆様にとっての負担のほうが大きいと判断」(提案書)したという。

PTAはともすると前例踏襲になり、活動の見直しを避ける傾向が強かったという。しかし、新型コロナで活動を止めてもとくに支障がないことがわかり、事情が変わってきた。大谷場東小PTAは、今後も「PTAダイエット企画」を続ける。

さいたま市PTA協議会は、2校の退会について「大変残念に感じておりますが、各校PTAのご判断であれば当協議会としては退会を受けいれざるをえないと考えております。当協議会は、これからも会の会則・基本方針にのっとり、各学校等との連携を密にしながら、児童・生徒の福祉の増進に向けて邁進していく所存です」などとする岡野育広会長の回答をメールで送信してきた。そのため、9月23日にインタビュー取材を申し込んだが、返事はない。

神戸市PTA協議会も「PTAは任意団体で、入退会を強制するものではなく、やむを得ない。しかし、可能であれば、これまで通り、一緒に活動していきたい」と答えた。

厚生労働省によると、日本の労働力人口全体が2019年までに全体で4%増える中、女性の労働力人口は同じ期間に8%も増えた。女性の労働社会における役割、存在価値は大きくなっている。にもかかわらず、PTAは相変わらず、「母親」をボランティアの担い手に想定して、保護者の出席が必要な行政の会議や地域のお祭りの運営にまで「動員」をかける。「コロナ禍は旧態依然の仕組みを見直すいい機会になった」という声さえあがっている。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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