自宅からも参列できる「オンライン葬儀」の実態 新型コロナが収束しても、普及し続けるのか

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オンライン葬儀に注力する3社の現状について見てきたが、今後の販売・受注見通しについて、セレモニーは「利用を希望した喪家は76%であるのに対し、実際に利用している葬儀は16%にとどまっている。その1つの要因は、喪家から会葬者への伝え方にある。きちんと伝えてもらえるようにできれば、もっと増える」と志賀司社長は話す。

また「事業計画を上回る申し込みがあるので、正直、現場は手が回らない状態である。コロナ禍の一過性ではなく、 人の最期に多くの人が立ち会えるような仕組みを通して、人とのつながりを考えるきっかけを作るサービスとして広がっていくことが期待できる」とマイクロウェーブの松田愛氏は語る。

コロナが収束してもオンライン葬儀は定着するかどうかについては、ライフエンディングテクノロジーズの栗本喬一執行役員は「オンラインでも参列できるようにすると、葬儀場に来る人が減るのではないかという葬儀社があるが、そうではない。海外にいて参列できないとか、田舎に住んでいて足が悪いので参列できないとか、今まで葬儀に参列できなかった人たちが参列できるシステムなので、定着するだろう」と見ている。

Webに否定的だった葬儀社が変わる可能性も

今後のサービス展開としては、セレモニーは、「スマートセレモニー・プラス」を年末に出す予定であり、葬儀のオンライン利用のさらなる拡大を目指す。

ライフエンディングテクノロジーズは、オンラインの横展開を図っていく計画だ。オンライン結婚式の『クラウドウエディング』を開始しており、「オンラインペット供養も予定している。介護施設の面会システムとして導入を検討しているところもあり、横展開をどんどん行ってオンラインの認知度を高め、利用を拡大していく」と意気込んでいる。

オンライン葬儀は、徐々に増えてきている。さらに拡大すると、これまでオンラインに否定的だった葬儀社の認識や取り組み姿勢も、より変化していくだろう。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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