中国が「原子力はクリーン」と推進しまくる事情 原発新設加速、輸出政策強化で国益を追求

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アメリカ・エネルギー省のブルイエット長官は、地政学的に重要な国の多くが、原子炉建設に必要な技術支援を中国とロシアに依存していることは、安全保障、核不拡散の観点から問題があるとし、懸念を示している。アメリカがリーダーシップを失ったこともその要因の1つとし、原子力技術や機器・燃料の輸出促進や、先進的研究開発などへの資金調達などを通して、原子力界のリーダーとしての立場を取り戻すことを目指すべきと主張している。

福島原発事故で打撃を受けた中国の原子力産業が停滞から復活した背景に、法規や人員等の安全体制整備や、エネルギー需要の大幅な増大とあわせて、国内の深刻な大気汚染対応の必要性に迫られ、原子力エネルギーを、再生可能エネルギーとともにCO2排出の少ない「クリーンなエネルギー」として位置づけ、再評価したことが挙げられる。

中国政府は、原子力エネルギーを「クリーン・エネルギー」として推進し、原子力エネルギーがすでに電力供給量の3分の1を賄う海南省のリゾート地海南島は「クリーン・エネルギーの島」として位置づけられている。

中東地域との関係深化

原子力エネルギーを活用することを「低炭素でクリーン」と位置づけることは、気候変動・脱炭素をめぐる中国の外交姿勢にも反映されている。今年9月、習近平主席は、CO2排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までにCO2排出量と除去量を差し引きゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを国連総会での演説で表明した。世界最大のCO2排出国として、これほど明確なコミットメントを明言したことは、アメリカのバイデン陣営を意識し、気候変動問題で世界の主導権を握りうる強力なメッセージとなった。

現在、中国は国家主導の原子力ビジネスを通して、中東諸国との関係強化、地域への影響力増大を図っている。2016年1月の習近平主席の中東歴訪では、サウジアラビアやイランと原子力協力の案件を取りまとめ、イランとは2基の「華流一号」の建設でも合意している。

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