北陸新幹線の沿線、長野県と新潟県にまたがる信越地域では、異業種による勉強会「信越県境地域づくり交流会」がオンラインとオフラインを組み合わせた連続セミナーを8月にスタートさせた。
新潟県上越市内の上越教育大学と「無印良品 直江津」、南魚沼市の宿泊施設「ryugon」(龍言)、長野県側の飯山駅の観光交流センターをサテライト会場とし、オンライン視聴も含め全体で60~70人が参加。講師は東京、長野県塩尻市、愛知県豊橋市からリモート出演する形を採った。これまでの交流会合が、オンラインを活用することで結果的に拡大することになった。
敦賀市や信越地域の試みは、コロナ時代の新幹線対策・活用や地域ネットワークのあり方を模索する動きといえる。人の移動や暮らし方、働き方に大きな変化のうねりが押し寄せる中、これらの動きは、「人を大量に運び、駅前の商業集積や観光地の来訪者を増大させる」という、従来の新幹線の役割やイメージを、大きく転換させる可能性をはらむ。
とはいえ、沿線地域すべてで、このような動きが起きているわけではないようだ。ある街の友人は「着実に開業準備が進んでいるようだが、今はコロナ対策にかかり切り。とても敦賀市のような動きは取れない」と驚きを隠さなかった。
「20世紀型の夢」振り払えるか
整備新幹線は20世紀を象徴する乗りもの、というイメージが強い。そして、新幹線を誘致し、建設にこぎ着けた地域は、「首都圏直結」「駅前の開発促進」など、どこかで「20世紀型の夢」を振り払えずにいたように見える。
しかし、コロナ禍は、少なくともこのような構図の根本的な再考を迫っているように感じられる。新幹線の存在を経済的、社会的利益につなげるには、さまざまな地域の活動を結ぶネットワークが重要になる。最も有力な結節点になりうるのが駅だ。だが「東京が近くなる」だけで、このようなネットワークが厚みを増すわけではない。
にもかかわらず、多くの街が、「駅前に建物がない」などと悩み続けてきた。それよりも、地元で地域と人、モノ、情報をつなぐ意思と仕組みが欠落していることのほうが、よほど深刻な病状であることをコロナ禍はまざまざと見せつけつつあるのではないか。
これから開業する路線の沿線や人々にコロナ禍が及ぼす影響を推し量るのは時期尚早だろう。ただ、開業済みの地域でも、すでに日常に溶け込んでいた新幹線の恩恵が必ずしも続かないかもしれないことに、注目するべき時期が来ているように見える。
コロナ禍を機に、より成熟した社会への起点となる仕組みや意識をどう再構築できるか。それが、整備新幹線の沿線地域をめぐる「2020年秋」の時点での焦点であるように感じられてならない。
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