JR各社が築いてきた新幹線のビジネスモデルは根底から揺らぎかけている。
2021年3月期の連結業績予想でJR東日本は4180億円、JR西日本は2400億円、JR九州は284億円の最終赤字を見込む。一方、JR北海道は2020年4~6月期連結決算が126億円の最終赤字となった。JR北海道を除き、各社とも鉄道事業収入に占める新幹線収入の割合は高い。速く、大量に人を運ぶことを使命としてきた新幹線ネットワークの意義自体が問われつつある。
とはいえ、時計の針は後には戻らない。少なくとも開業スケジュールが決まった整備新幹線は粛々と準備が進む。長崎新幹線は2年後、2022年秋の開業が決まった。翌2023年春には北陸新幹線の敦賀延伸が控える。
そのとき、どんなビジネスモデルに基づき、どんなダイヤと料金を設定するのか、JR各社は悩みながら答えを探すことになろう。四国新幹線の構想や、山形新幹線のフル規格化や羽越新幹線の着工を求めている山形県など、関係する地元の動向も気がかりだ。
「新幹線沿線」の模索
新型コロナ感染拡大の第2波への警戒が根強かった8月、福井県敦賀市は「新幹線敦賀開業まちづくり推進会議」の中心団体による官民連携ワークショップを開催した。
開業時の姿をどう描くか。今後の誘客法、地域の稼ぐ力、関係人口の増大策は……。参加者らは、来訪者の満足度や期待感、感動の向上に向けて、取り組む内容やテーマを語り合った。
「コロナ禍による働き方やライフスタイルの変化など、少し先の社会も見据えつつ、その中で新幹線開業がやってくることを市民とともに考え、理解を深めたい」と敦賀市新幹線まちづくり課の松田和之課長補佐は趣旨を語る。
「開業までわずか3年、どうしたらよいのか」。4月初めに敦賀市の人々とオンラインで話した際は、当惑と混乱が口ぶりから伝わってきた。しかし、やがて「まだしも今年が開業3年前でよかった」という言葉を聞くようになった。「開業年にこのような混乱に見舞われたら、本当にどうなっていたか。今なら、『ウィズ・コロナ時代』の新幹線によるまちづくりを検討することができる」。
敦賀商工会議所青年部の宇野精浩氏は「『こんな風にすれば新幹線の開業対策がうまくいったよね』という昔の事例をそのまま参考にできないのはつらい。でも、今までとは違う価値を私たちの市が生み出すんだ、と意地でも言い続ける。それで何かを生める可能性は絶対ある。僕らまちづくりの仲間で言っているのは、下は絶対向いたらいかん、前を向くのも当たり前、今は斜め上を見よう」と意気軒高だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら