脱ハンコの先「都市のデジタル化」で来る大変化

日本で進む「スマートシティ」実現への取り組み

今後、日本が本格的にスマートシティの整備を進めていくのであれば、これからの都市づくりについて考える必要があるだろう。

2019年11月に死去した中曽根康弘氏が首相だった1983年に「アーバンルネッサンス構想」を打ち出してから、日本では都市開発が内需拡大型経済政策の柱に位置付けられてきた。1985年には国土庁(現・国土交通省)が公表した「首都改造計画」が予測した東京の過大なオフィス不足が、不動産バブルを招く原因ともなった。

1990年のバブル経済崩壊で一時は沈静化したものも、2001年に政府は都市再生本部を設置し、東京証券取引所に不動産投資信託(REIT)の上場市場を開設。かれこれ30年以上も、東京圏の都市開発が続けられ、人口の一極集中化が進んできた。

その成果として、日本経済の国際競争力が復活したかと問われれば、そう答えるのは難しいだろう。不動産会社がいくら超高層ビルやタワーマンションを建てても、それだけでは経済成長を牽引するのは難しいのではないか。

時代とともに変わる都市開発

2020年1月にトヨタ自動車がアメリカで開催された展示会で、スマートシティの実証都市「ウーブン・シティ」(静岡県裾野市)を建設すると発表した。

3月にはスマートシティの早期実現に向けてNTTグループと業務資本提携。8月にはオープンイノベーション・プログラム「SmartCityX」への参画を決め、パートナーにはあいおいニッセイ同和損保、出光興産、日本ユニシス、JR東日本、博報堂が名前を連ねる。スマートシティでは都市開発のプレーヤーが大きく変わりつつある。

「中国やGAFAに対抗できるスマートシティのプラットフォームを開発するのは容易ではない。自分の土地に社員や関係者など2000人を住まわせたグリーンフィールドであれば、どのような街づくりでも、さまざまなサービスの実証実験も可能となる」と、経産官僚の村上氏もトヨタの取り組みに期待する。

筆者は、2018年4月に東洋経済オンラインで「将来5割減?『オフィス』に迫り来る構造変化」と題する記事を書いた。テレワークが本格的に普及すれば、従来型のオフィススペースは不要になり、新しい需要を創出するためにさまざまな取り組みを進めざるをえなくなる、と述べていた。新型コロナによって、そうした状況が一気に訪れたわけだ。

これからの都市開発も、さまざまなプレーヤーが参画して、新産業・新ビジネス創出のための実験場として活用を図っていく必要があるだろう。スマートシティは、それぞれ異なる環境で暮らす住民にとって便利なサービスを生み出すだけでなく、急激に人口減少、高齢化が進む都市をいかに維持していくかの実験場としても機能させていく必要がある。

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