脱ハンコの先「都市のデジタル化」で来る大変化 日本で進む「スマートシティ」実現への取り組み
日本では、公図と現況を確定するための地積調査の実施率が52%にとどまり、所有者不明土地が九州の面積に匹敵するなど、国土管理で重大な課題を抱えている。
現在、不動産登記の義務化に向けた法整備の準備も進んでいる。しかし不動産登記が義務化されても、すでに所有者不明状態になった土地の権利関係を明確にして問題を解消するには、相当な時間がかかるだろう。
停電した住戸の把握も可能に?
インフラ分野のデータ基盤として、建物や住戸に設置されたスマートメーターの活用が期待されている。
2020年4月に電力事業者の発送電分離が実施され、スマートメーターは送配電事業者が管理。同年6月の電気事業法改正で、スマートメーターのデータの有効活用が認められ、2022年4月に法律が施行される。
すでに2018年11月に東京電力パワーグリッド、中部電力、関西電力送配電とNTTデータの4社で「グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合」を設立し、データの有効活用に向けた議論を始めている。
「組合にはほかの電力事業者も参画しており、スマートメーターには全て固有のIDが付与されているので、住戸や建物を管理するデータ基盤として十分に利用できるだろう」と、グリッドデータバンク・ラボ・カスタマーサービスチームマネージャー・山口哲生氏は見込んでいる。
同組合では、まずデータの標準化作業を進めてきた。スマートメーターのIDと設置場所を示すJIS(日本工業規格)の住所コードのひもづけ方法や、30分ごとに電力使用量を送信・処理する方法などが、事業者によって異なっていたためだ。
スマートメーターのIDと住所コードをひもづけたデータ基盤が整備されれば、将来的には日本の住戸の状態を正確にリアルタイムで把握できるようになる。
「これまで自然災害などによって大規模な停電が発生しても、現地に入らなければ建物ごとの状況を把握できなかったが、スマートメーターからのデータ送信が止まれば、その住戸が停電している可能性が高いことがわかる。また、電気使用量のデータから空き家かどうかを判断することもできる」(山口氏)と、インフラ情報としてさまざまな活用を検討している。
課題は収益化の見通しだ。インフラ情報のデータ基盤として有効活用するために必要な投資を回収できるほどの需要があるかどうか。
スーパーシティ構想を取りまとめた内閣府元審議官の村上敬亮氏(現・中小企業庁経営支援部長)が指摘した「コモンズの悲劇」が解消できなければ、本格的な投資は難しい。まずは同組合でデータ活用のフィージビリティスタディを行い、事業化に向けた環境整備に取り組んでいる段階だ。
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