優柔不断のイメージを消し去る強さがなければ難しい福田首相の低迷脱出

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優柔不断のイメージを消し去る強さがなければ難しい福田首相の低迷脱出

最後に福田首相と小沢民主党代表のどちらが折れるのかという度胸試しのチキンレースとなった日銀総裁問題。その決着の行方が気にかかるが、それとは別に、首相の発言がおもしろい。

人事案提示の3月7日、野党不同意を承知で「反対されたらそのときに考えるしかない」と言い放った。開き直ったのかもしれないが、人事権者が「そのときに考える」では無責任すぎる。ところが、福田語録を見ると、よくいえば冷静沈着、悪くいえば他人事のようなこの手の発言が実は多い。

3月2日、イージス艦事故について「二度とこのようなことがないようにしたい」と述べたが、ここは政治の最高責任者として「絶対に繰り返さない」と言い切るべきだろう。支持率低迷の感想を聞かれると、「そのためにどうこうということはない」と無視の構え(2月18日)。内閣改造に関する質問に「正直言って、そういうことを考える時期ではない」と答えたが(25日)、全然、正直に言っていない。

ビジョンを示さない、腹を見せない、説明責任も果たさないというのは、首相のキャラクターであり、手法でもある。だが、過去を見ると、自民党結成の立役者の三木武吉氏は「誠心誠意、嘘をつく」が得意技だったし、竹下元首相は「言語明瞭、意味不明」が口癖だった。「隠す、あいまいにする、言い逃れる」は自民党政治の伝統といえなくもない。斜に構え、表情も変えず、木で鼻をくくったような言葉を連発する福田首相だが、だからといって、決して没個性の無味乾燥な政治家ではない。その物言いから自民党の伝統的なリーダー像とは異質の「バランスの取れた合理的な実務者タイプ」という個性がほの見える。問題はそれだけで傾いた自民党の屋台骨を支え切れるかどうかだ。

優柔不断イメージを消し去る強さと敢闘精神が出てこなければ、低迷脱出はむずかしいのではないか。

塩田潮

塩田潮(しおた・うしお)

ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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