日本人はドコモの高い携帯料金に甘んじている 菅首相が圧力をかけるのは間違っている?

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競馬である。

日本の携帯通信サービスも世界一だが、いまやサラブレッドの質も世界一だ。種付料(いわゆる牡の種牡馬が、子馬を産むために牧場に繋養されている牝馬と交配し受胎させる費用)の世界一は、昨年亡くなるまでは、日本のディープインパクトが4000万円で世界一だった(実は、種付料を公開していない馬もいて、アイルランドで繋養されているガリレオが実質的には世界一であることは間違いがないが、ディープはその次だったと思われる)。

そして、この週末の4日には、フランスで凱旋門賞が行われる。
これを勝つことが、日本競馬界の悲願となっている。実は、これはただの象徴的な存在で、凱旋門と同等に価値のあるレースはそれなりの数があり、日本調教馬もそのうちのいくつかを勝っている。逆に言えば、日本のサラブレッドが紛れもなく世界一であることを名実ともに示すためには、後は凱旋門を勝つだけだ、ということである。

過去に最も近づいたのは、1999年のエルコンドルパサーと2012年のオルフェーヴルと言って良い。今年は、コロナの影響で、日本から輸送して参戦する馬はいないが、ずっと欧州で調教を続けられているディアドラという牝馬が参戦する。オッズ(事前の人気)は低く、難しいと思われるが、どうだろう。

馬券に関しては、日本のJRAもネットで馬券を発売しているから、簡単に買うことができるのだが、いわゆるホームバイアスがあり、日本馬はいつも過大な人気になっている。さらにいうと、要は、欧州競馬の素人がみんな馬券を買っているので、有名な馬が過大に売れるので、日本で有名でない、かつ穴馬を狙うのが馬券戦略としては正しい。

凱旋門賞は馬場悪化でエネイブル3勝目を見るレースに

日本での1番人気は、昨年凱旋門賞3連覇を逃した、歴史的な牝馬エネイブルだが、欧州では、アイルランド調教の若い3歳牝馬ラブの方が1番人気で、これを狙いたかったところだが、日本時間の1日夜、出走回避の情報が入った。どうも、雨で馬場状態が悪くなることを嫌ったということらしい。

これは、日本の競馬と違うところで、日本では、馬に病気や故障が発生しないと出走が決まった後、直前に回避することは認められていない。日本は「ファン優先、馬券優先」だが、欧州は「馬最優先」であり、こういうところはやはり競馬とは欧州の文化であり、日本は強くなっても、一生追いつけないところだと思う。

よって、馬券的には面白くないが、断然1番人気のエネイブルが凱旋門3勝目を挙げるのを見るレース。欧州では、牝馬はレースよりも繁殖を優先させるから、6歳になるまで、こんなすばらしい馬がレースに出続けることは異例中の異例である。

なぜなら、子供の値段は5億円を軽く超えることは確実なので、凱旋門1着の170万ユーロ(約2億1000万円)なんて「はした金」はどうでもいいからである。それでも繁殖にあがらずにレースを続けた理由は、昨年2着惜敗した雪辱をなんとしても果たしたい、そして、負けて繁殖にあがるのと、勝ってあがるのとでは、子供の値段が大きく違うと見込まれるからだ。世の中も、地獄の沙汰も、サラブレッドの世界もすべてカネ次第なのである。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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