しかし、実は、これが日本企業の利益率が低い理由の1つである。
投資家からも、メディアからも「日本企業は欧米企業に比べて利益率が低すぎる。儲ける力が弱すぎる」と攻撃されてきた。
あたかも、日本企業がサボっているような攻撃のされ方だったが、本当の理由は、儲けると叩かれるから、目立たない程度に利益を抑える癖がついてしまっていたのだ。出る杭は打たれる。儲ける企業も打たれる。みんなで儲けが少なければ、みんなで少しだけ批判を受ければ済む。それなら、後者に甘んじる。合理的だ。
そもそも、日本の携帯キャリアが儲け過ぎなら、アメリカのアップルはどうなるんだ?フェイスブックもグーグル(アルファベット)も、だ。それならば、彼らに対してこそ、菅首相は攻撃すべきではないか。しかも、彼らは、本国アメリカでは一定の法人税を納めるが、自国以外ではとことん租税回避行動をとり、法人税をほとんど払っていない、という批判が日本以外の世界中でなされている。そちらが先ではないか?
独禁法違反と言えるのか?
2の「独占的な地位を利用して価格を高く釣り上げている」は、問題の本質だ。これが事実なら、こうした事態は放置できない。
しかし、これはまさに法律違反の問題である。首相が批判するのではなく、公約にするのではなく、有罪であることを立証すればよいのであり、それをしないのは、行政府の怠慢であり、政権の不作為である。政権が自慢することでなく、むしろ政権を攻撃する材料となるはずだ。
担当は、独立した組織としての公正取引委員会であり、独占禁止法違反で排除措置命令などの強い措置を取ればいいだけのことだ。違反状態でそれをしないのならば、それは公正取引委員会の大失策であり、政権の大失策である。
では、なぜこれまで問題にならなかったのか?それは、独占禁止法違反ではなかったからである。
3社に独占力はない。確かに3社の寡占状態ではあるが、ついこの前までは、NTTドコモ、au の2強をソフトバンクが追い上げる、という状態だった。ソフトバンクは「つながりにくい」などといったサービスの品質の批判を受けながらも、2社よりも安い価格で攻撃を仕掛け、3強の一角まで浮上してきたのである。そして、「3強」のポジションを獲得するや否や、利益率優先に切り替え、価格戦争は事実上やめてしまったに等しいのである。したがって、そもそも、断然1位のドコモが独占力を発揮して、価格を支配している、という状況ではなかったのである。
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