エレクトロニクス業界は業績底打ちも、本格回復には力強さを欠く《スタンダード&プアーズの業界展望》
柴田宏樹
薩川千鶴子
2008年秋のリーマンショック以降の世界的な景気の急速かつ深刻な悪化を受けて、急激に悪化した日本の主なエレクトロニクス関連企業の業績は、スタンダード&プアーズの格付け先の企業を含めて、各社が進める構造改革や各国の政策の効果、また世界経済の持ち直しによって、09年4~9月期までに最悪期を脱した感がある。
スタンダード&プアーズは、10年には業績がある程度落ち着き、事業会社の格付けは徐々に安定化に向かうと予想している。業績の底入れ感が鮮明になったことを理由の一つとして、2月10日にはパイオニアの格付けの「アウトルック」を「ネガティブ」から「安定的」に変更した。これは、日本の事業会社セクターでは約1年半ぶりの「アウトルック」の上方修正であり、今後、パイオニアに続いて、「アウトルック」を上方修正するケースも徐々に出てくるだろう。
ただ、当面は世界的に厳しい景気情勢が続いているうえ、為替の動向等には不透明要因も残る。今後、業績が一本調子で回復していくというシナリオは描きにくい中で、業績回復に力強さを欠いていることもあり、実際に格付けやアウトルックを上方修正するには慎重な見極めが必要と考えている。
<民生エレクトロニクス>
国内民生エレクトロニクス企業の業績には底打ち感が見られる。パナソニック(A+/安定的/A−1)、ソニー(A−/ネガティブ/A−2)、シャープ(A/ネガティブ/A−1)、パイオニア(B+/安定的/−−)の4社合計の営業損益は、09年4~6月期に800億円超の赤字となった後、同7~9月期には300億円の黒字に転換し、同10~12月期には黒字額がさらに拡大し、2780億円となった。