エレクトロニクス業界は業績底打ちも、本格回復には力強さを欠く《スタンダード&プアーズの業界展望》
各社は業績が大きく悪化した半導体、ハードディスク駆動装置(HDD)、携帯電話事業を中心に生産拠点の統廃合を進めており、同分野では業界再編も進み出している。
10年3月期の決算に向けては足元で業績回復の兆しが見られる。スタンダード&プアーズは、各社が市場環境の変化に対応すべく、事業ポートフォリオの見直しを進め、固定費削減、研究開発や設備投資の抑制を通じて、キャッシュフローの改善を進めていることに一定の評価をしている。事業環境の改善や事業構造改革の進展によって、中長期的に業績回復が期待される場合には、格付けやアウトルックの上方修正を検討する可能性もあるだろう。
一方で、多くの地域で厳しい経済情勢が続いていることや、事業再編の踏み込み度合いやスピードは依然、欧米や韓国の競合企業に見劣りするとスタンダード&プアーズが見ていることを勘案すると、業績の回復ペースが加速するには時間がかかりそうだ。業績回復が遅れることなどによって資本・負債構成に再び下方圧力がかかった場合には、格下げにつながる可能性もある。
中期的には、各社が取り組もうとしている、景気サイクルの影響を受けやすい半導体やデジタル家電などから、相対的に安定的した利益を確保できる社会インフラ、産業機械、情報通信やソフトウエア/サービスなどへの事業ポートフォリオの見直し・再構築が着実に進展するかに注目していく。
また、成長が期待される新興国市場を中心とする海外市場での事業基盤を拡大していくことができるかにも注目していく。その際には、利益やキャッシュフローの回収を十分に認識した事業戦略や財務方針を実行できるかを引き続き重視する。
<電子部品業界>
薄型テレビ、パソコンなどのデジタル製品や自動車の販売が政府の購入支援策に支えられ回復しつつあることで、これらの最終製品向けに部品を供給しているTDK(A+/ネガティブ/A−1)、オムロン(A/ネガティブ/A−1)などの国内電子部品メーカーの受注と業績も回復基調にある。