黄色のファナックが「白いロボ」で深める自信 山口社長「協働ロボットでも世界一を狙う」

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――具体的にはどのようにソフト改良をしていきますか。

動作経路を自動生成する機能を(今年)10月から追加する。自社で開発しているビジョン(画像認識)センサーを使い、ロボットがリアルな世界を認識し(周辺の設備に)ぶつからないように動作経路を自動生成することで、教示を最小限にできる。ロボットハンドや周辺装置との接続性を高めるなどして、ロボットの立ち上げを容易にしていくことが重要だ。

予防保全の改良も進める。ゼロダウンタイム(ZDT)という、ロボットをネットワークで接続し何か怪しい情報があれば検出し、壊れる前にアラートを出し修理補修を行うことで稼働率を向上させるシステムを以前から販売している。CRXシリーズはすでにZDTの一部機能に対応しているが、残りの機能についても遠くない時期に対応したい。

――協働ロボットの成長性をどう見込んでいますか。

これから先、すべてのロボットが協働ロボットに切り替わるかというとそうではない。用途によって使い分けられ、安全柵の中で使う産業用ロボットも重要な役割を持ち続けると思う。

黄色いロボットが減るわけではなく、黄色いロボットも増えながら、協働ロボットもさらに増えていく。以前から当社の稲葉善治会長が、「将来的にはロボットのうち半分が協働ロボットになる」と言っており、そのあたりを目指していきたいと思っている。工場現場の自動化は長い時間をかけて進展していくもので、5年後に半分になるかというとそれほど早くないだろう。

ロボットの需要は伸びていく

――米中貿易摩擦やコロナの影響で設備投資全体で見ると低迷が続いています。ロボット全般の需要は今後どのように推移していきますか。

ロボットに対する引き合いもコロナ前に比べれば様子見感があるのは確かだ。ただ、ほかの設備産業に比べればロボットに対する需要の減少はだいぶ限定されている。

自動化の要求はコロナ前からだんだん高まっていたし、コロナによって自動化が重要だという考えはむしろ高まっている。ロボットの需要は少しずつ戻ってきて今後は伸びていくのではないかと思う。

全体的な設備投資に対しては、当面はコロナの第2波、第3波の影響もあるので様子見が続くと考えられ、米中貿易摩擦の影響なども注視する必要がある。年単位、クオーター単位で一喜一憂しても仕方がない。中長期的には工場の自動化、ロボット化は伸びていく産業なので、その中で長期にわたって顧客に貢献していくために、経費を徹底的に抑えながら、先を見据えて商品の開発とそれを生産して供給できる体制作りを強化していくことが大切だ。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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