都内タクシー狙う「令和の当たり屋」卑劣な手口 銀座、六本木で相次ぐ関西弁恫喝男による被害

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そのわずか1カ月後。日本きっての証券街である兜町に着け待ちしていた吉岡さん(仮名・40代)のタクシーに、1台の自転車が突っ込んできた。一方通行の細い路地で一時停止をし、発進前には充分な安全確認をしていただけに、驚きを隠せなかった。

「発進と同時に、私の右側からスポーツタイプの自転車がサイドミラーギリギリのところを通り抜けようとしたかと思えば、『今当たりましたよね』と言ってきた。こちらは当てた感覚はありませんから否定すると、かなり強い関西弁で、『誠意を見せろ』と脅してきた。

本人は『俺はこの辺りでコンサルティングとして働いており、素性は確か。金に困っているわけではないが、あなたから誠意が感じられないから示してほしい』と明らかに金銭を要求しているのだろうな、と感じた。

見た目はIT企業でSE(システムエンジニア)でもやってそうな風貌だったので、そのギャップに私も気が動転しましたが、これは先輩と同じケースでは、と思い立ちました」

吉岡さんが先輩運転手に連絡してみると、やはり先月と同様の当たり屋だったという。通報したところ、駆けつけた警察官による取り調べが始まった。だが、直接的に金銭を要求したわけでもなく、事件として処理されることはなかった。

「被害届を出そうにも、こういったケースでは捜査を続けるのは難しいと言われてしまった。事件化してないため、男性の顔写真も名前も出せず、注意喚起もできない。警察も当たり屋の存在を把握しているのは間違いないですが、証拠不十分という判断になってしまった。

ドライバーもできれば表面化はしたくないのが本音ですが、私のあとにも同じように被害にあったドライバーが後を絶たない。誰かが声を上げる必要があると感じたんです」

近日中に連名で被害届を提出も

当たり屋に遭遇したドライバーが勤務する会社にドライブレコーダーの確認を依頼したところ、「企業として対応することは難しい」とのことだった(通常、タクシー会社のドライブレコーダーの保存は2、3日間と短い)。

多くのドライバーが泣き寝入りしてきた港区、中央区を中心としたこの「令和の当たり屋」詐欺だが、事態を重くみたドライバーたちが集まり、被害者の連名で近日中に被害届を出すことも視野に入れているという。

現在のところ、ほかの運送業車両や一般ドライバーに対しての当たり屋行為は明るみに出ていないというが、今後はその余波が及ぶ危険性も秘めている。コロナ禍で弱ったタクシー業界を狙った計画的な当たり屋行為は、倫理的にも、その姑息さからも、到底看過できるものではない。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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