税抜と税込「値札」をよく見ない人ほど買う真実 小売りの業界団体が税抜表示の容認を求める訳
今回の検証は、値札の税込表示と税抜表示の違いで販売数量が3%も違うこと、そして、低所得者より高所得者のほうが値札表示に強く反応していたことを明らかにした。
この結果を中園准教授は「合理的不注意の結果」とみる。「レジで消費税分が上乗せされることはわかっていても、買い物カゴに入れる瞬間に1円単位までは計算しない。目に見える価格のほうに重きを置いて『この価格と、あとちょっと』と考える。これが合理的不注意で、高所得者ほど合理的不注意が顕著であることがわかった」(同)。
逆に言えば低所得者ほど、見た目ではなく実際の支払い総額まで頭に入れて買い物カゴに入れる傾向が強かったということだ。
税額がはっきり見える表示で8%の売り上げ減
値札表示と販売数量の相関関係についてはアメリカ・スタンフォード大学のラジ・チェティ教授らが2009年に研究を行っている。ある期間に、特定のスーパーマーケットのヘルスケア関連商品だけを税額がはっきり見えるよう表示したら、その期間のその領域だけ販売数量が平均8%落ちたという結果だった。
中園准教授らの検証の特徴は、調査の対象を全国約5000店舗へと広げ、購入者5万人の属性とも接続させた点にある。
2013年に施行された消費税転嫁対策特措法は時限立法で、期限は2021年3月まで。現在、スーパーで牛乳を買う際に目にしている「168円(税抜)」「168円+税」「168円(本体価格)」といった表示は来年4月以降、原則すべて「182円」の総額表示へと戻る。
小売業界には、2004年に総額表示が義務化された際に消費が著しく減退した手痛い記憶がある。今回また総額表示に戻されれば再び消費者マインドに悪影響を与えるのではないかと懸念しているのだ。
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