DV加害者にやめさせる為に絶対欠かせない条件

価値観の変化と被害を自覚させ痛み受け入れる

原宿カウンセリングセンター所長の信田さよ子さん(撮影:ニシブマリエ)

日本の対応は他の先進国と比べて見劣りするものの、信田さんはここ数年、警視庁の対応には変化を感じているという。

「警視庁は全国の警察に比べても進んでいます。DV被害者からの通報があると、(刑法の暴行罪や傷害罪などの容疑での)逮捕を厭わない方針になってきました。これは、すごいこと。法的には被害者の告訴がないと逮捕できないので、被害者に『告訴しましょう』と説得するんですね。しかも拘留中には『DVとは何か』といった勉強をさせたり、出るときには加害者プログラムを紹介したりするんです」

「なぜ、そうなったか。2013年頃からストーカーや虐待などで被害者が殺される事件が相次ぎ、警視庁は女性や子どもを守ることの優先順位を上げたんです。『面前DV』という言葉もでき、2004年の児童虐待防止法の改正では、子どもが親のDVを見ることは心理的虐待だと明確になりました」

加害者意識でいっぱいな被害者

DVのある環境にいると、当事者には「当事者意識」がないことが多いと言われる。これは、彼らの認識がねじれているためだという。加害者に被害者意識があり、被害者には加害者意識がある。

加害者に言わせると、自分は「言うことを聞かない妻に対してがまんしている」側であり、被害者は「自分はいつも間違えて夫を怒らせてしまう」側だと感じてしまう。そのねじれにはなかなか気付かず、警察や全国各地の配偶者暴力相談支援センターといった第三者に相談して初めて、自分にされている行為はDVであると気付く。そういった事例は枚挙に暇がない。

信田さんは被害者に対し、絶えず「あなたは悪くない。あなたは被害者なんです」と言い続ける必要があるという。

「殴られたり怒鳴られたりしても、すぐ、『あ、DVされた』とは思わないですよね。普通は、それより先に『どうして怒らせちゃったんだろう』と考える。自分がさせちゃった、という発想です。1年以上被害者グループに参加している人でも『私みたいな人が被害者と言っていいんでしょうか』と言うくらいなんです」

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