アメリカ初「億万長者税」を導入したNJ州の思惑 コロナ禍で議論が進むアメリカの富裕層増税
ニュージャージー州は9月17日、コロナ禍による財政難をやわらげるべく他州に先駆けて「億万長者税」の導入に動いた。アメリカでは拡大する格差に対処するため富裕層増税を求める声が高まっており、こうした国民的議論が一段と熱を帯びてきそうだ。
フィル・マーフィー州知事(民主党)は、100万ドル(1億円強)を超える所得に対する州税を2%近く引き上げることで州議会幹部と合意したと発表した。これによりニュージャージー州は富裕層に対する州税の税率が全国トップレベルとなる。今回の合意には、年収15万ドルを下回る世帯に年間500ドルの給付金を与える策も含まれている。
「人生で成功を収めた人々に対する恨みはまったくない」。大手投資銀行ゴールドマン・サックスの元幹部でもあるマーフィー知事はこう述べた。「だが未曽有の状況の中、中流層などでは非常に多くの人々がたいへんな犠牲を強いられている。今は富裕層にも負担を求めなくてはならない」。
綱渡りの地方財政
富裕層増税の背景は、ここ数十年で最悪の経済危機だ。首都ワシントンでは追加経済対策の協議が行き詰まっており、州や市に対する支援も進まない。このため各自治体では公共サービスの縮減など、財政的な綱渡りが続いている。財政赤字が膨らむ中、どうやって財政破綻を回避するかが喫緊の課題となっているのだ。
各州の歳入見込み額は急激に落ち込んでいる。カリフォルニア州では310億ドル、ニュージャージー州では100億ドル、フロリダ州では34億ドルの落ち込みといった具合だ。
ワシントンでは連邦議会下院の過半数を握る民主党が、地方・州政府を支援するために2兆2000億ドルの追加支援策を成立させる目標を堅持している。しかし、この予算規模は気前が良すぎるとして、トランプ大統領と上院で過半数を占める共和党から拒絶された。トランプ氏と上院共和党は、民主党の政治家がトップを務める州や市には送金したくない考えだ。民主党が動かしている自治体は行政運営に失敗しているとトランプ氏らは主張している。