EUに乱暴な揺さぶりをかけた英ジョンソン首相 終わらないブレグジット、貿易協定の期限迫る

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英国の法案提出でEU側の不信感が高まっており、合意に向けたハードルは一見高まったようにみえる。ただ、厳しい言葉の応酬や法的措置の開始と、外交協議は区別して考えたほうがよい。離脱合意を修正する法案を理由にEU側が交渉を打ち切ることや、欧州議会が将来関係合意の受け入れを拒否することは現実的でない。

事務方レベルでの交渉は行き詰まっており、10月の首脳会議に向けて、英国のジョンソン首相、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長、ミシェル欧州首脳会議常任議長(EU大統領)、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領などの政治介入があるかが次の焦点となろう。

政治介入後も協議の膠着が続く場合にはいよいよ、移行期間終了後の崖に身構える必要が出てくる。欧州議会や各国の議会承認に必要な時間を考えると、11月頃までは最終的な合意期限を引き延ばせると考えられよう。離脱協定が定める6月末の法的期限を経過し、移行期間の延長は難しいが、合意が近いと判断されれば、何らかの形で議会承認に必要な時間を確保する可能性がある。

ギリギリの交渉で物流の混乱が避けられない

だが、こうしたギリギリの交渉は企業の対応を難しくする。貿易協定を締結した場合も、英国とEUの間では何らかの税関検査や規制検査が必要となる。英国政府の調査では、移行期間終了後の準備が完了している英企業は現時点で24%にとどまる。EUとの物流拠点があるドーバー港とユーロトンネル周辺では最大7000台の輸送トラックの渋滞が起きる可能性があると警告する。貿易協定が締結できた場合も物流の混乱は避けられそうにない。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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