パイオニア復活の成算、オール三菱で大型増資
苦渋のプラズマテレビ撤退から1年。パイオニアがようやく成長路線へ足を踏み出した。
9日、同社は海外での公募増資とホンダ、三菱電機、三菱化学の3社を引受先とする第三者割り当て増資で総額約260億円を調達すると発表。現在の発行済み株式総数の実に5割に上る新株を発行する大型増資となる。
財務基盤を強固にし、高性能のカーナビシステムや有機EL照明を増資引き受け企業と共同で開発。新興国市場を足場に収益力を強化する戦略だ。
足元の業績も、拠点や人員リストラによる固定費圧縮効果で、2009年9~12月期は7四半期ぶりに営業黒字に浮上。原資不足が懸念された11年3月の社債600億円償還も手元キャッシュで賄えるという。今回の調達資金はあくまで成長原資であり、小谷進社長は「再び中長期の成長ステージへ舵を切る時期に来た」と明るい表情を見せた。
復活劇はこれから
再スタートにこぎ着けられた陰には、メインバンクである三菱東京UFJ銀行の全面的な支援があった。
経営再建に着手した1年前、パイオニアは産業活力再生法に基づく公的出資を資金源に想定していた。だが、この案が立ち消えたのは、「国内にいくつもカーナビメーカーがある中、パイオニアだけを救済する理由がない。国内唯一のDRAMメーカーであるエルピーダメモリに出資するのとは事情が違う」(経済産業省関係者)ため。
公的救済の手から漏れた大口融資先のために、三菱UFJはホンダなどいずれもメインバンクを務める3社から支援を集め、“オール三菱”体制を築いた。
経営危機の瀬戸際から支援で生還したパイオニア。ただ今後、事業を軌道に乗せるには自力しか頼むものはない。以前なら企業存続という名目がついた資金調達も、金融危機が遠のいた今では、投資先に市場が厳しく目を光らせている。復活劇の本番はこれからだ。
(杉本りうこ 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年2月20日号)
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