現在のマネー膨張は「インフレの芽」なのか

「貨幣数量説」がなぜ現実に当てはまらないのか

しかし、現状では顕著な差が見られている。M2と名目GDPの前期比伸び率の差(M2-名目GDP)を見てみよう。足元で確認されているマネーの伸びが成長に起因するものではないことは一目瞭然である。理論的(厳密にはケインズ経済学的)に貨幣を保有する動機は、①「取引動機」、②「予備的動機」、③「投機的動機」の3つが想定される。

①は文字どおり経済取引に使うために、②は将来の不確実性に備える、つまりは貯蓄のため、③は資産運用で有利になるため、それぞれ貨幣を保有するという動機である。GDPの成長とマネーの増加を想定した貨幣需要増加は、①を前提としている。また、コロナ禍における貨幣需要増大については②の動機が大きく寄与していそうなことは想像がつく。もちろん、金利が消滅していることから「利子率が低いほど、流動性(≒貨幣)を選好する傾向が強くなる」という流動選好説に基づく③の動機も無視できないが、やはり直感的に②が腑に落ちる。

預金通貨の伸びが牽引

今見られるM2の伸びは財政措置の結果とみられる。危機時に銀行貸し出しが増えることは日米欧に共通する現象だが、アメリカでは失業保険の上乗せ給付や現金給付など政府による手厚い家計部門への支援が特殊要因として考えられる。規模こそ違うが、日本でも定額給付金(10万円)や事業者への持続化給付金が寄与しているだろう。ユーロ圏も国ごとに金額や給付対象に差異はあっても、定額給付に類する政策は取られている。銀行貸し出しに加え、特殊な財政措置がM2を直接的に押し上げたのは明白である。

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