日本人に蔓延する「失敗したくない」という病 コロナ禍で浮き彫りになった特有の症状とは

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しかし、この世界にはそんな荒っぽい語学学習をする私の上をいく人がたくさんいます。イタリアももちろんそうですが、中東や南米など、おおむね積極的に会話する地域で、言語の”ハッタリ”達人に多く出会ってきました。

二言、三言でも知っている言葉があればもう十分で、男性なら「コンニチハ」「サヨウナラ」「アイシテマス」だけで、冗談ではなく日本女性と恋に落ちる。この場合、しゃべりたい意欲と相手への気持ちを少ない語彙に精一杯込めながら、雰囲気で相手に合わせていくわけです。彼らが伝えたいのは、言語よりコミュニケーション力であり、相手を知りたい、わかりたい、と思う気持ちなのでしょう。

言語はその国の文化や考え方を表すものですから、母国語にしている人々と付き合っていくうえで徐々に理解できる表現のニュアンスというものがあります。テキストだけでは学べない部分ですね。そこに暮らして恋愛し、喧嘩もし、仕事に生かして不条理を経験し……。真の言語力を身につけるには、やはり「経験」が不可欠です。

言語を教えるのが難しい

一家でポルトガルに住むことになったとき、リスボン大学の学生に息子の家庭教師を頼みました。彼は外国人に言葉を教えることを専門に勉強していました。その学生いわく、最も言語を教えるのが難しい外国人が日本人、とのことでした。日本人は文法を間違えまいと慎重になりすぎて、なかなかしゃべろうとしない。文法の正しさにこだわるがため、かえって習得率が下がってしまうというのです。

私がかつて日本でイタリア語を教えていた生徒さんにも、とにかく文法の正しさにこだわる方がいて、会話をしたイタリア人が「君は間接代名詞を使うのが好きだねえ」と苦笑いをしつつ、戸惑っていたことがありました。すると途端に躊躇して、もう積極的に会話ができなくなってしまう。もちろん日本人であってもハッタリ力をおおいに発揮する人もいますが、真面目な人ほど表現に引っかかって、会話がブロックされる傾向がある。

逆の立場になればわかりますよね。きちんとした日本語を話せなくても、文法はめちゃくちゃでも、何かを伝えようとしている人なら、こちらも言わんとすることに耳を傾け、理解してあげようと思う。たしかに文法をしっかりと把握することの合理性はあります。しかし言語コミュニケーションでは「伝えたい」という意思と意欲が最優先なのです。

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