危機はまだ去らず、シャープが抱える課題 中期計画1年目の目標はクリアしたが…

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しかし、同日発表された今2015年3月期の業績見通しは、売上高3兆円(前期比2.5%増)と増収ながら、営業利益は1000億円(同7.9%減)と厳しいものだった。利益が減る最大の要因は前期貢献した太陽電池の失速だ。さらに液晶事業、電子部品事業にも懸念が浮上している。

「太陽電池は今、事業転換を図っている最中で、課題が残っている」。高橋社長は会見でそう強調した。前期は政策効果の恩恵を受けた太陽電池だが、今期は消費増税後の住宅販売の反動で需要が減る。加えて、海外でのメガソーラー案件の縮小のほか、円安に伴う輸入部材の採算悪化も響く。目下、メガソーラーの設計・調達・建設の拡大や、家庭用のエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の拡販などで挽回を図っているが、それでも50億円の赤字に転落する見込みだ。

主力の液晶事業の先行きも不透明感が強い。液晶事業の採算改善のカギは、利益率の高いスマートフォン向けなど中小型液晶パネルの比率向上にある。しかし、主力の亀山第2工場で、当初は前期中に5割近くへの上昇を見込んだが、「後ろ倒れや急激な市場の冷え込みで、2014年2月から3月にかけての中小型比率は21%から25%程度」(高橋社長)にとどまっている。シャープは今上期中に中小型比率を5割へ伸ばす意向を示しており、営業利益550億円(前期比32%増)と増益を見込むが、達成への道のりは平坦ではなさそうだ。

収益柱の電子部品も失速

さらに、液晶パネルとともにシャープの業績を支える電子部品も足元の販売が減速している。同社は液晶パネルだけでなく電子部品事業にも注力しており、高精細CMOSセンサーを使ったスマートフォン向けカメラモジュールなどトップシェア製品も抱える。当初、前期は120億円の営業黒字を計画しており、液晶や太陽電池に次ぐ利益改善を見込んでいた。

しかし、実績は営業利益32億円と大幅な計画未達。LEDデバイスの在庫処分が影響したほか、想定より低採算の部品の売り上げ比率が増えたことが痛手となった。今期は「液晶と電子部品を併せて顧客に提案していく」(高橋社長)とし、営業利益150億円への回復を見込むが、液晶と電子部品の併売はすでに前期から進められており、思惑通りに進むかは未知数だ。

前期は黒字化を達成したとはいえ、液晶、太陽電池、さらに電子部品の事業環境は依然厳しい。退職給付債務の計上もあり、3月末の自己資本比率は8.9%と心もとない。どのように経営を安定させ、成長への種まきをするのか。シャープが向き合うべき課題はまだまだ多い。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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