石破氏、岸田氏の「2位争い」が何とも熾烈な事情 自民党総裁選、焦点は「隠れ反菅票」の行方

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仮に、こうした現状が9月14日の投票結果にそのまま表れれば、「菅氏380前後、石破、岸田両氏はいずれも75票前後」という結果も想定される。ただ、菅氏支持陣営の中には「あまり菅氏に勝たせすぎると、本格政権作りに向けて人事でもいうことを聞かなくなる」(麻生派幹部)との声も少なくない。

さらに、「今回総裁選は、反乱分子の石破氏の息の根を止めるのが目的で、場合によっては意図的に菅氏支持陣営が岸田氏に票を流すこともありうる」(自民幹部)との見方もある。加えて、地方議員が軸となる地方代表も、それぞれの派閥系列の人物が多いため、「投票直前の微調整も可能」(自民幹部)との声も漏れてくる。

いつもの総裁選ドラマ、「どよめき」か「ため息」か…

こうしてみると、今回の総裁選も「まさに派閥談合の極致」(自民長老)となる公算が大きい。ただ、これまでの総裁選史を振り返ると「必ずドラマがあった」(閣僚経験者)のも事実。その多くは、劣勢と見られた候補が議員票で想定以上に上積みしたケースだ。

9月14日午後2時からの総裁選は、これまで通り無記名投票で実施される。しかも、国会議員と地方代表計535人が名簿読み上げ順に一緒に投票することになるので、「投票時の表情や動作の“監視”を含めても、誰が誰に入れたかがまったくわからない」(総裁選管理委)のが特徴だ。

開票結果が報告・公表されるのは9月14日午後3時半前後と見込まれている。届け出順に石破氏、菅氏、岸田氏の得票が読み上げられることになるが、会場となる都内のホテルの大会議場で、どの候補の得票に「おおっ!」というどよめきが巻き起こるか、それとも「あーあ!」というため息ばかりが広がるのか。消化試合ではあっても、「ふたを開けてみるまでわからない総裁選ドラマ」(自民長老)となることは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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