「82年生まれ、キム・ジヨン」で考える女性の地位 韓国で社会現象になった同名人気小説が映画化

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小説の日本語訳を担当した斎藤真理子氏は「フェミニズムを扱った小説ではありますが、ジヨンは闘士ではないし、また際立った犠牲者というわけでもありません。ところがそれが思いもよらない効果を生みました。この普通さが、読者が自分を投影するのにはうってつけだった」と指摘する。

結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われる30代女性のジヨンが主人公。韓国の実力派女優、チョン・ユミが務める © 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

主人公のキム・ジヨンという名前も、韓国ではよくある一般的な姓、そして名前を意識的にチョイスして名付けたものだという。それゆえに読者は、ごく普通の平凡な女性を自分のことのように感じた。そしてここで綴られたエピソードの数々は、女性として生きるうえでの「声にならない叫び声」として共感を呼んだ。

主人公は、結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われる30代女性のジヨン。常に誰かの母であり、妻であることを求められていた彼女は、時に閉じ込められているような感覚に陥ることがあった。

平凡な主婦にある”異変”がおこる

そんな彼女を夫のデヒョンは心配するが、本人は「ちょっと疲れているだけ」と深刻には受け止めない。だが最近、ジヨンはまるで他人が乗り移ったような言動をとるようになる。あるときは自分の母親となり、そしてあるときはすでに亡くなっている夫と共通の友人となり、そしてあるときは祖母となり――。しかしその時のジヨンの記憶はすっぽりと抜け落ちている。デヒョンはそんな妻を傷つけるのが怖くて真実を告げられず、ひとり精神科医に相談に行く――。

主人公のジヨンを演じるのは、ベストセラー小説を原作とした映画『トガニ 幼き瞳の告発』(2011年)、1156万人の観客を動員したパニック映画の大作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)のチョン・ユミ。彼女の抑えた演技が、ジヨンの複雑な思いをしっかりとすくい上げており、韓国のアカデミー賞とも言われる第56回大鐘賞映画祭で主演女優賞を獲得した。

そして妻のジヨンを献身的に支える夫デヒョンを演じるのは、先述した映画『トガニ 幼き瞳の告発』『新感染 ファイナル・エクスプレス』などでチョン・ユミと共演し、今回3度目の共演にして初の夫婦役となったコン・ユ。3年ぶりのスクリーン復帰作となった本作では、妻の異変に心を痛めながらも、何とか寄り添おうと心をくだく夫を繊細に演じきっている。

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