オンライン課金が、ジャーナリストを救う ネットでジャーナリズムが繁栄する日

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今では誰もが持っているスマートフォンを使い、紙面からオンラインに一瞬にしてつながるサービスも始めた。同社は昨年9月から、スマホのアプリ、英ブリッパー(Blippar)と提携。アプリをダウンロードし、紙面のアイコンにかざすと、スマホが同社ウェブサイトのビデオやオーディオに即時につながる、「拡張現実(AR)」のサービスだ。

紙面が「紙面ではできないデジタルサービス」に広がることで、大ニュースのビデオ、チケットが売り切れになった人気コンサートのスライドショー、人気コラムニストの肉声のコメント、クロスワードの答えを、新聞を購読している人だけが楽しめる。ARサービスは無料で、これも、新聞購読者をオンラインに導く戦略だ。

「この投資は、読者が、私たちの編集局から発信されているサービスを、オンラインも含め、最大限、楽しんでもらうためのものだ。なぜなら、私たちの読者はそれに値するすばらしい読者だからだ」(同社編集局長、ポール・サミン氏)。

ARサービスを提供している日刊紙は、カナダではフリープレスだけ。同社の取り組みには、北米の新聞業界が注目している。

課金のおかげで、業績も回復

米国には、課金サービス代行会社まである。ベンチャー企業、ジャーナリズム・オンライン(JO)で、「プレス・プラス」というサービスを提供している。

JO広報担当のシンディ・ローゼンタール氏は、「新聞業界の誰もが『20年前に時計を巻き戻せたら、(オンライン記事を無料にはしなかったのに)』と言うけれど、私は今はほっとしている。これまでに、たくさんの新聞社が潰れるのを見てきたけれど、これからは少なくなるだろうから」と言って、プレゼン資料をめくり、あるページを誇らし気に指で示した。

彼女が見せたのは、新聞発行大手マクラッチー傘下の29紙が2012年第4四半期に導入した課金後のデータだ。新聞購読者の実に86%が、オンライン版課金に伴い、10~25%の購読料値上げを受け入れ、その結果、13年度通年の販売収入が、2500万ドル(約25億円)の純増につながるという見通しになったというものだ。

北米新聞社のオンライン版課金の効果は、特に最近の四半期決算から顕著になってきた。

前出のマクラッチーが今年2月に発表した2013年第4四半期決算では、 売上高は新聞広告の減少で前年同期比8.4%減収。しかし、オンライン広告とオンライン課金を合わせたデジタル総収入は同15.8 %増と2ケタ増になった。プレス・プラスを使ったオンライン課金の収入は13年通期では3140万ドルに上り、見通しの2500万ドルを大きく上回った。

タイムズのロバーツ編集局次長が抱いた「今まで無料だったオンライン版に課金を導入すると、ビジター数が減る」という懸念も覆し、同期3カ月のユニークビジター数も19.7%増。これによって、オンライン求人求職広告の収入も19%増となった。

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