村上ファンドvs.ゼネコン、水面下で蠢く攻防戦 中堅・準大手株を相次いで取得、狙いは何か
例えば、大豊建設の2020年3月期末の現預金は302億円と、月商の2.2倍ある。同時点の投資有価証券も、住友不動産や京浜急行電鉄株など67億円を所有している。西松建設も同時点で、住友不動産や松竹株など投資有価証券553億円を所有し、総資産の1割超を占める。
株価が割安な点でも共通する。大豊建設の9月8日時点の株価は2794円。PBR0.73倍で、時価総額487億円にすぎない。西松建設は株価1993円、PBR0.55倍で、時価総額は1107億円。淺沼組は株価4270円、PBR0.87倍、時価総額344億円だ。村上系ファンドにとっては、現預金が豊富で割安となれば”狙いやすい水準”と言える。
3社とは別の準大手ゼネコン社員は「株価が安くて、現金や株を持っている。昔の体質から抜け出せず、配当性向もたいして上げず、政策目的の保有株式も減らさないゼネコンもある。そういう会社はファンドに狙われて当たり前」と指摘する。
業界再編の可能性も
3社とも借入金が少なく、自己資本比率は約40%と財務は良好だ。事業もマンション工事に偏らず、土木、建築工事をバランスよく手掛けている。経営が比較的健全な側面も、村上系ファンドの標的となった理由であるようだ。
では、村上系ファンドは次にどう出るのか。
投資ファンドの要求は一般的に、自己株取得や配当増などの株主還元の強化のほか、社外取締役の増員などがある。実際、ストラテジックキャピタルは淺沼組に対し、6月26日の定時株主総会で政策保有株式の売却や配当の増加を求める株主提案を行った(議案は否決)。
大豊建設や西松建設に対する具体的な要求は現時点では明らかになっていないが、前川氏とは別のアナリストは「キャッシュの使い道が1つの論点になる可能性はある」と指摘する。
株価の上昇を狙い、業界再編を仕掛けることも想定される。村上系ファンドが2015年にエレクトロニクス商社の黒田電気と対立した際、村上氏は「プレーヤーが多すぎる。業界再編が必要」と主張。2005年には村上系ファンドによる阪神電気鉄道株の取得が、電鉄の統合会社である阪急阪神ホールディングス誕生と阪急、阪神両百貨店統合のきっかけとなった。
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