村上ファンドvs.ゼネコン、水面下で蠢く攻防戦 中堅・準大手株を相次いで取得、狙いは何か

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村上系ファンドの手法に詳しい業界関係者は、「再編を引き金にするのが村上系ファンドの手法のひとつ。ゼネコンは再編が進んでいないこともあり、ファンド側が仕掛けることはあるだろう」と語る。

ゼネコン業界では鹿島と竹中工務店が技術連携を進めるなど包括連携の枠組みが広がりつつある。また、全国に約46万もの建設業者が存在し、中小・零細企業が多いことから「経営が非効率」と指摘されることもある。村上系ファンドの仕掛けをきっかけに、連携拡大や再編が進む可能性はある。

対応に追われるゼネコン各社

ゼネコン各社は村上系ファンドの対応に追われている。大豊建設は「個別案件なので回答できない」としているが、5月に策定した中期経営計画で配当性向30%以上(2020年3月期実績は25.3%)、臨機応変な自己株式の取得を株主還元の方針として掲げた。

西松建設も「個別の株主についての質問には回答を控える」と口を閉ざすが、すでに会社幹部がファンド側と接触したもよう。淺沼組は目下のところ、「四半期に1度の頻度でファンド側とミーティングしている。要求などに対して)受け入れられるところは受け入れていく」(広報担当者)としており、2020年3月末で純資産の19%ある政策保有株式残高を、2022年3月期までに10%未満まで削減する方針を打ち出した。

ゼネコン株を狙うモノ言う株主としては、イギリスの年金運用会社のシルチェスター・インターナショナル・インベスターズが戸田建設株を13.1%、奥村組の株式を11.88%保有している。

ゼネコンは内需関連株にもかかわらず、外国人保有比率が約2~3割と比較的高い企業が多い。村上系ファンドの攻勢をきっかけに株価上昇や業界再編などの動きが出てくれば、さらに外国人投資家の関心は高まるかもしれない。

村上系ファンドも今後、影響力向上を狙って既存出資先の株式を買い増すことやスーパーゼネコンを含めた他社の株式を取得することも考えられよう。「戦いはまだ始まったばかり」と冒頭の大手ゼネコン幹部。この先、一波乱も二波乱もありそうだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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