コロナ禍を活かせない地方が抱える「3つの闇」 巨額の金を使った地方創生で地方は変わったか

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そのうえで、この期に及んですでに団塊ジュニア世代ほどの人口のコブでもない世代に、今さら人口回復のために「産めよ、増やせよ」といっても、もはや数のうえでは人口増加トレンドなどに持っていくのは不可能です。

すでに日本社会は人口減少の「ポイント・オブ・ノーリターン」を超えています。これからは、せめて人口減少によって変容する社会構造に対応した社会保障改革などを進め、団塊の世代、団塊ジュニアなどのこぶが人口構成からなくなる2050年頃を目標地点として、どうにか制度破綻などが起きないように務めるほかないのです。今から多少の人口が回復したところで、過去の社会制度、経済モデルを続けることは不可能です。

地方は依然として若者や女性から愛想をつかされている

3つ目は「地方は若者や女性から愛想をつかされている偏見や差別を改めなかった」という深刻な問題です。

政府ばかりが悪いのかといえば、そうではないのです。地方側もこれまでのやり方、あり方を変える必要があるにもかかわらず、それを行ったのはごくわずかにとどまりました。本来は、地方の疲弊の責任を全て東京に押し付けたうえで、出ていった若者や外からくる若者には変化を求めるばかりだったことを悔い改めなくてはなかったのです。しかし、肝心の地方の意思決定を握る偉い人たちのマインドセットが大きく変化することはありませんでした。

今も、地方から東京に転出する男女の6~7割は、20代前半に集中しています。そして女性のほうが多く東京へ転入しています。全国規模で言えば、2019年でみると、約3万人の女性が東京都に転入超過しています。

また2019年のグローバル都市不動産研究所の調査によると、彼女たちが東京に行く理由としては「東京で暮らしたかったから」「親元や地元を離れたかったから」という意見が多くあります。そして、全体の約半数が「地元に戻る予定はない」と回答しています。

2020年になって、内閣府の女性社会参画の有識者会議で「地域に性差への偏見が根強く存在している」ということがようやく指摘され、「企業経営者などの理解が足りず、やりがいが感じられない環境になっている」といったように、報告書では、地方が改善すべき課題としてようやく整理されています。

実は給与などの条件も大切ですが、それ以上に職場環境、家庭環境、地域社会などが従来からの若者や女性に向ける意識、無意識に行っている「偏見」や「差別」を解消しない限りは、都市へ逃げる人は減らないでしょう。都市はある意味では、地方のそのような若者、女性にとってのシェルターになっているのです。

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