コロナ禍を活かせない地方が抱える「3つの闇」 巨額の金を使った地方創生で地方は変わったか

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一方、最近になって、コロナ禍により東京から地方へ人が移動しているかのような話があります。それらしき数字も出ているように報道されているので、一見、信憑性がありそうですが、これは拙速な判断です。地方創生を政府がやってくれれば地方が再生するというのを期待するのと同様、コロナのおかげで「棚ぼたで都市から人がやってくる」「地方の人が都市へ移動しない」などといったことを未来永劫期待することなど、できないのです。

そもそも東京都の住民基本台帳をみると、外国人の流入こそ激減しているものの、日本人については流入が止まり、転出していっている状況ではありません。むしろ4月・5月は東京都の日本人人口も増加しており、マイナスになったのは6月だけです。7月にはプラスに転じています。都市化の流れは大勢をみても、止まっているとは言えないのです。

地方の一部には、「これからはコロナで黙っていても地元の若者が地元にとどまり、都市部の若者が地方に来てくれる」かのような希望的観測をもっている自治体も見受けられます。

しかし、そのような他力本願の考え方こそが地方の衰退を招いているのです。いつまでも今のような状況が続くわけではありませんし、多数ある地方から「地元」を選んでもらうためには、それだけの特徴がなければなりません。

つまり、日頃から地方の性差差別の解消や、成功者を妬んだりしないオープンな環境醸成、過去の産業維持ではなく新たな稼ぐ産業作りなどと向き合っているところはチャンスになりますが、予算消化ばかりしているようなところには、せっかく都市から地方への流れができたとしても、「行きたい場所」として選ばれないのです。

上天草市や余市町に見る「成功する地方」とは?

地方において、最近、経済の回復が早いのは、巨大都市圏の周辺部に存在している自然環境豊かなエリアの地域で、かつ従来から地元で支持される高いサービスレベルの飲食、観光を手掛けてきたところです。例えば、私の関わる地域で言えば、熊本県上天草市でしょう。同市は国立公園も擁するエリアで、九州内でも人気の宿や飲食が集積し、観光アクティビティも多数あります。すでに地元消費という点ではコロナ前に戻りつつあるほど地元消費が集まり、マリーナには船が溢れています。

また、北海道余市町では人気のワイナリーとのプロジェクトを進め、事業パートナーとのグランピング施設なども開業しています。少ない人口でも付加価値の高い商品、サービスで稼ぎを作り、地域を支えられる仕掛けを持てるところは今、追い風を受けています。そしてこれらに共通するのは、若者や女性がプロジェクトの中心人物として活躍しているということです。

地方創生政策は大きな1つの節目を迎えました。だからこそ、単にトーンダウンするか、自分たちの地方の未来に向けた動きを止めないか、それぞれの地域の向き合い方が、未来を分けていくのは間違いありません。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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