コロナ禍を活かせない地方が抱える「3つの闇」 巨額の金を使った地方創生で地方は変わったか

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まず1つ目は 「地方消滅」を出発点にした段階で、大失敗していたという点です。本連載でも初期の段階で「安倍首相の地方創生はすでに失敗している」という記事を書いていました。

なぜこの時点でそう判断したかと言えば、ひとことでいえば手法がこれまでとあまり変わらなかったからです。都道府県などの区分で計画を立て予算をつける従来型では、今まで何度やっても失敗ばかりです。

結局、今回も、せっかくの地方創生総合戦略策定予算の多くが、東京を主体とする大都市のコンサルタントに流れ、どこの地域も当初からあり得ない人口目標を掲げる総合戦略になりました。そこに、年間約1兆円を超える予算が地方創生関連予算としてつけられたわけですから、結果は最初からわかっていたと言えます。

「若者を拘束しろ」といわんばかりの提言にゾっとした

何よりも、少ない人口でも稼ぎ、維持できる地域を作り出すことがこれからは大切なのに「従来型の地方自治体を維持するのに人口が必要だ」といった考え方そのものが、狂っていたのです。人々の生活のうえに自治体が成立するという考え方ではなく、「自治体が破綻してしまうから人口を地方に集めなくてはならない」という主張をしているようにしか見えない日本創生会議(座長:増田寛也氏)などの考え方そのものが、人々の生活の基本を無視していたのです。

日本創生会議は、地方の女性流出により地方の人口再生産力が低下していずれ消滅するということを背景に、地方に「すぐに流出を防ぎ、都市に若い女性を出さない。さらに言えば都市の若い女性を地方に呼び寄せることが大切」というような提言をしたわけです。「地域を消滅させるのか」と脅しながら、「若者をどうにか地域の未来のために拘束しろ、呼び戻せ」というようにしか見えない考え方にゾッとしたのは私だけでしょうか。

しかし、この「このままだと地方が消えてしまう。若者よ、地方に行って子どもを生み育てよ」、という「地域や国が中心で、個々人の人生は後回し」といったような思考こそが、若者を地方から流出させ、さらには子供を生み育てにくい社会をカタチ作っている根深い問題なのです。

2つめは 「そもそも人口回復可能時期は過ぎていた」ということです。

根本論ですが、地方創生の政策が開始となった時期には人口回復が可能なタイミングは過ぎていました。もともと、1990年代後半から2000年代前半の時期に、人口構成の「第2のコブ」である団塊ジュニア世代が家庭を持ち、出産が多くなる時が、最後のチャンスだったのです。

しかし、その頃の日本では、「バブル崩壊からの金融再生」「企業業績の一刻も早い回復」といったことが社会的に優先され「就職氷河期」という言葉が盛んに使われました。

新規採用者数を大幅に絞ったり、非正規雇用の拡大といったことを選択していきました。地域や国の未来にもつながっている団塊ジュニア世代の生活、未来のあり方は、無視されました。いわば、彼ら彼女らは金融再生、企業業績回復のために犠牲になったのです。結果として、彼らの世代が積極的に子どもを産み育てることはありませんでした。当然の結果です。

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