安倍首相「突然の退陣」で混線模様の後継レース 石破、岸田両氏に菅氏が絡む三つ巴の展開に
その一方、一気に走り出した後継総裁レースの行方は混とんとしている。注目の選挙方式は「本格総裁選なら石破氏有利、両院総会方式なら岸田氏が有利」(閣僚経験者)などの観測が飛びかうが、「コロナ対策の継続性を重視するなら、菅氏しかいない」(自民幹部)との声も広がる。
その菅氏は、ここにきて総裁選を仕切る二階氏との蜜月関係が目立っており、「菅氏が党内の声に背中を押される形で出馬表明すれば、一気に菅政権」(無派閥議員)との見方も少なくない。
ただ、菅氏が2021年9月末まで安倍首相の残余の総裁任期を引き受けるショートリリーフとの位置づけなら、「山積する内政、外交の重要課題への本格対応は望めない」(閣僚経験者)との指摘も出ている。急場しのぎの暫定政権なら解散もできず、1年後の本格総裁選を経ての事実上の任期満了選挙ともなれば、「自民党政権への国民の不安、不信を増幅しかねない」(自民長老)からだ。
有力候補は石破、岸田、菅の3氏
新政権の課題は、コロナ対策と経済復興の両立が最優先だが、困難な対応が予想されるアメリカや中国、韓国などとの外交分野の懸案処理も急務だ。その一方で、衆院議員の任期が切れる2021年10月までの衆院選に自民党としてどう臨むかでも、新政権の真価が問われる。
一部には「後継首相はまず国民の信を問うべきだ」(自民幹部)と解散断行説を唱える向きもある。ただ、「コロナ禍が収束しない中での解散などできっこないし、国民も認めない」(首相経験者)との常識論も根強く、10月以降の政治日程をみても、「年明け以降も含めで、解散のタイミングは見当たらない」(同)というのが実情だ。
ただ、仮に任期満了選挙になったとしても、自民現職の各衆院議員や出馬予定の公認候補にとっては「政治理念や政策より、自分の選挙に有利となる新総裁」(若手)が後継選びの判断基準となるのは自明の理だ。
現状で有力視される石破、岸田、菅の3氏についてみると、「選挙に有利なのは石破氏。党内の安定なら岸田氏で、安倍政治の継続なら菅氏」(閣僚経験者)という位置づけとなる。これに、最大派閥の細田派を差配できる安倍首相と、キングメーカー狙いとされる麻生、二階両氏がどう絡むかが後継レースを占うカギとなる。
場合によっては、石破、岸田、菅の3氏だけでなく、野田、河野両氏や茂木外相らも出馬することで、「総裁選が第1回投票では決着がつかず、議員だけが投票できる2回戦での勝負」(自民幹部)となる可能性も否定できない。
過去の総裁選でも「2位・3位連合」などによる2回戦逆転のケースもあり、「総裁選方式が議論になるのも安倍首相や麻生氏の石破潰しの思惑が絡むからだ」(石破派幹部)との見方が多い。このため、9月に入って以降も、自民党お定まりの「利己的な大派閥の合従連衡を含めた国盗り合戦」(閣僚経験者)が展開されそうだ。
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