安倍首相「突然の退陣」で混線模様の後継レース 石破、岸田両氏に菅氏が絡む三つ巴の展開に

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安倍首相は、慶応大病院での再検査を受けた8月24日に、「(退陣を)1人で決断した」と明かした。退陣表明のタイミングについては、「(党・内閣)人事や臨時国会のことを考えると、今しかなかった」と強調した。

安倍首相は退陣を決断した24日には、大叔父の故佐藤栄作元首相を抜いて、首相としての連続在職記録を更新した。ただ、日ロ北方領土交渉や北朝鮮拉致問題、さらには憲法改正などの懸案解決には至らなかったことも踏まえ、「(辞めるかどうか)悩みに悩んだ」と表情をゆがめながら語った。「体調不安で正常な決断ができなくなる」ことへの恐れから退陣表明に踏み切ったとして、国民に謝罪するとともに理解も求めた。

会見は約1時間に及んだが、これまでのようにプロンプターは使わず、冒頭発言も約13分間と簡潔にして、多くの質問に答えることで説明責任を果たそうとの意識がにじんだ。任期中の解決を公約していた拉致問題のくだりなどでは目を潤ませる場面もあったが、肩の力は抜けており、吹っ切れた様子が見て取れた。

垣間見せた「大宰相」の矜持

安倍首相は後継者決定まで、体調を管理しながら職務を完遂することも明言。後継選びについても「口出しすべきでない」としたうえで、「選ばれた人には一議員として協力する」と述べるなど、史上最長で「1強」と呼ばれた大宰相としての矜持も垣間見せた。

安倍首相退陣の報が流れたのは、会見に先立つ28日午後2時ごろ。同日午前の閣議後に盟友の麻生太郎副総理財務相と会談して辞意を伝え、その後、公明党の山口那津男代表や二階幹事長、さらには岸田氏らにも順次伝え、大手紙などは号外を発行した。

今回、このような退陣表明の方法をとったのは、ちょうど13年前の秋口に、臨時国会召集直後に「投げ出し」の形で退陣したことへの強い悔恨からだとみられる。与野党議員の反応も「体調不良ではやむを得ない」(自民幹部)と同情ムードが広がり、「大事な時に体を壊す癖がある」などとツイッターに書き込んだ野党の女性議員が炎上後に謝罪する一幕もあった。

街角インタビューでの反応も「かわいそうで涙が出た」「ゆっくり休んで欲しい」などの声が多く、「日本的情緒を計算した退陣表明」(自民長老)ともみえた。ただ、いわゆるモリカケ問題や桜を見る会、さらには8月25日に初公判が行われた河井克行前法相と夫人の案里参院議員の選挙違反(買収)事件など、相次いだ政権の闇をすべて帳消しにすることは不可能だ。このため、誰が後継者になってもこうした負の遺産が重荷になることは避けられそうもない。

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