金価格は「第3のエンジン」点火で再度急騰する いったん落ち着いても、いずれ上昇の可能性
特にFRBの積極的な金融緩和策による市場への投機資金流入が、ここまでの強気相場の根幹をなす大きな下支え要因であったことは、疑いの余地がない。
振り返ると、今年1月時点では、昨年12月のFOMC(米公開市場委員会)において3会合連続で行われてきた利下げが打ち止めとなり、2020年は金利据え置きとの見方が強まっていた。
だが、その時点でもFRBの金融緩和は相場の押し上げ要因としては十分だった。その後新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的規模でロックダウンが行われ、経済活動が停止してしまうなか、FRBがゼロ~0.25%のレンジまで一気にFF金利を引き下げ、量的緩和策も再開し必要ならば無制限に米国債の購入を行うとしたのは記憶に新しい。FRBの金融緩和は、やはり金市場にとっていちばんの強気材料だ。ここまでの相場上昇のほとんどが、金融緩和によってもたらされたといっても過言ではないだろう。
FRBの「新政策」も金相場の上昇を「後押し」
さてこうしたなか、FRBのジェローム・パウエル議長は27日、カンザスシティー連銀主催の国際経済シンポジウムで講演を行い、インフレに関する政策方針を変更する意向を示した。
例年ワイオミング州ジャクソンホールで開かれているこのイベントは、しばしばFRB議長が政策変更を表明する場になることで知られている。今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響でWEBセミナーとなったが、そのジンクスは続いているようだ。
議長は労働市場の逼迫が、物価上昇圧力につながらなくなっていることなどを指摘し、ここ数年の物価低迷に対する警戒感を示した。そのうえで、今後は2%の目標を超えてインフレが進行したとしても、ある程度はそれを容認する姿勢を打ち出した。
前年比で2%というインフレ目標は依然として有効ではあるが、あくまでも平均としてのものであり、一定期間目標を下回るインフレが続いたあとは、2%を超えるまでに物価が上昇しないと平均では2%の目標を達成しないという。
ここまでかなりの長期間、2%を大きく下回るインフレが続いてきたことを考えれば、こうした方針に基づくなら、かなりの期間2%を超えるインフレを作り出さなければいけなくなる。その分、現在の積極的な金融緩和策も長期化することになるだろう。
FRBは少なくとも2022年末までゼロ金利政策を維持するとしているが、最近では「あと4~5年ゼロ金利が続く」との見方も浮上している。社債の購入といった、中銀としては「禁じ手」とも言える緩和策の拡大に踏み切ったことを考えれば、現時点では否定的なマイナス金利の導入も、状況次第では可能性が全くゼロというわけではない。このようにFRBが積極的な緩和方針を維持している限り、金相場の上昇基調が止まってしまうことはなさそうだ。
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