米巨大ハリケーン襲来で原油は急騰するのか ローラとマルコ上陸で石油施設に深刻な影響も
アメリカでは「2つのハリケーン」がほぼ同時に同国のメキシコ湾岸を襲うという過去に例のない現象への警戒感が高まっている。
まずは「マルコ」だ。先週末、メキシコのユカタン半島の東海上に発生したこの熱帯低気圧は急速に勢力を拡大し、ハリケーンとなってメキシコ湾を北上。その後再び熱帯低気圧に勢力を弱めたものの、ついにメキシコ湾岸に位置するルイジアナ州に上陸した。
一方、マルコよりも早く大西洋上に発生した熱帯低気圧「ローラ」は、8月25日未明にメキシコ湾に侵入。ハリケーンに勢力を拡大したうえ、26日夜までにやはり同湾岸のテキサス州とルイジアナ州の州境あたりにも上陸すると予想されている。ハリケーンのメキシコ湾侵入は、一般的には海上油田の閉鎖に伴い、石油生産が大幅に落ち込む「強気要因」として見られている。だが、それは本当だろうか。
注目すべきは、ハリケーンの勢力ではなく「スピード」
アメリカなどでは、中心付近の最大瞬間風速が秒速33メートルを超えるとハリケーン、49メートルを超えるとカテゴリー3以上の大型ハリケーンと呼ばれる。実は、今回のハリケーン級熱帯低気圧は、勢力としては特にものすごく強いものではなく、一段と警戒されている「ローラ」も、「カテゴリー5」といった超大型のハリケーンには発達しないとも見られている。
もっとも、原油市場を見るうえで重要なのは、ハリケーンの大きさや風速の大きさよりもむしろ、その「進行のスピード」だ。進行速度の遅いハリケーンは、それだけ長時間その場所に居座ることになるので、おのずと被害も大きくなる。
超大型ハリケーンが数時間で通過してしまうより、小型でも1日、2日と停滞した場合の方が被害は大きくなるというわけだ。今回は「ローラ」のスピードは遅い自動車並みとされ、マルコに至っては自転車並みで、メキシコ湾岸に到達してからはまるで「ローラ」の到着を待つかのように、メキシコ湾岸沿いを西に向かって移動すると見られており、被害が想像以上に大きくなることも考えられる。
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