米巨大ハリケーン襲来で原油は急騰するのか ローラとマルコ上陸で石油施設に深刻な影響も
米安全環境局(BSEE)の発表によると、24日現在でメキシコ湾の海上油田プラットフォーム281カ所から職員が避難、メキシコ湾岸地域全体の82.4%にあたる石油生産が停止中だ。今後「ローラ」接近に伴い、生産停止はさらに増えそうだ。ただ、こうした生産停止は、一時的なものにとどまる可能性も高い。
その理由の1つに2010年に英BPの海上油田、「ディープウォーター・ホライズン」での大規模爆発事故後の処置が挙げられる。大量の原油が流出してしまったことを受け、海上油田の安全基準が大幅に強化されたことから、最近は少し大きな熱帯性暴風雨が接近しただけでも施設を閉鎖、職員を避難させるようになった。
今後の需給をどう読めばいいのか?
それだけ一時的な生産停止の影響は大きくなるが、ハリケーンが通過してしまえば、すぐにでも生産が再開される可能性が高いと見てよいだろう。ハリケーンが上陸するまでには、供給不安から原油は「買い」、その後は生産が再開するにつれて売り圧力が強まるというのが通常のパターンだ。
もちろん、2005年のハリケーン「カトリーナ」のような超大型ハリケーンが直撃、甚大な被害が生じれば生産の停止も長期化することになるだろうが、今回のような勢力であればそこまでの心配をする必要はないかもしれない。
ただし、前述のように特に「マルコ」のスピードが遅く、メキシコ湾岸沿いを進むと見られていることや、「ローラ」が上陸した際に2つが「合体」する可能性などには注意が必要だ。とにかく前例のない現象だけに、思った以上に大きな被害が出ることになるかもしれない。
一方、メキシコ湾岸に上陸してしまえば、今度は製油所への被害が懸念される。今回の上陸地点とされるテキサス州やルイジアナ州には、多くの製油所が並んでおり、多くが暴風雨による施設への被害や、停電による稼働停止のリスクを抱えることになる。今回はモティバ・エンタープライズが、テキサス州ポートアーサーに所有する日量60.7万バレルの精製能力を持つ全米最大の製油所の閉鎖を検討しているとのニュースも伝わっており、一時的な精製能力の低下は避けられないだろう。
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