ダッフィーのサイズ違い、キーホルダーなどは、クロスセリングだ。自分のダッフィーに感情移入し、人格(クマ格?)を与えている熱心なファンは、同時に2体自分の周りに存在させようとはしない。ゆえに、関連商品としてバリエーション展開をしてクロスセリングを図っているのである。当然、シェリーメイもバリエーション展開があるはずだ。
さらには、シェリーメイの登場によって、ダッフィーとペアの絵柄になった食器や各種グッズの発売も加速している。強力なクロスセルである。
顧客を囲い込み、使い続けさせることで利益を創出することを「アフターマーケティング」という。プリンタつながりで例示すると、プリンタは本体よりも専用インクで利益を出す。「衣装」はダッフィーのアフターマーケティングである。手作り派もいるが、手作りするような熱心なファンは公式の衣装セットもしっかり購入する。季節毎に販売され、売れ続ける。そして、シェリーメイの衣装も。
企業が顧客化した後に収益を上げられるパターンは、大きくアップセル・クロスセル・アフターマーケティングの3つだ。ディズニーはダッフィーでしっかりこの3パターンを用いている。そして、シェリーメイの投入で一気にそのパイを2倍に拡大したのである。やはり、恐るべしディズニーだ。
ちょっとしたグッズを見たときに、「くだらない子供のおもちゃ」などと決め付けるのではなく、そこにどんな背景があり、どのような売り方で、顧客の財布のひもをゆるめようとしているのか、じっくり推察してみよう。ちょっと大人なテーマパークの楽しみ方が出来るかもしれない。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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