シェリーメイの出現は、リカちゃん人形にボーイフレンド(初代)として立花わたるくんが発売されたのとはわけが違う。
恐らく、筆者の自宅にも長時間行列しなくても買えるような安定供給がなされた頃には、シェリーメイがやってくるだろう。そして、バリエーションや衣装が増殖していくのだ。
さて、このようにディズニーランドを運営するオリエンタルランドが独自のストーリーまで作って、グッズ販売に力を入れるのには、ちょっとした背景もあるようだ。
■グッズから企業のおかれた状況を推測する
2009年12月5日付週刊東洋経済の記事「特集 ディズニーの正体−独り勝ちゆえの悩み 次の成長戦略を描けるか」によると、オリエンタルランドはテーマパーク事業で独り勝ちの状態であるものの、利益率が低く、次の成長戦略が明確に打ち出せない限り、投資対象としては「まったく魅力がない」という。
新たなテーマパークを構想したり、海外からの観光客を取り込んだりと、様々な打ち手があるが、どれも一筋縄ではいかないだろう。しかしグッズ販売はそれほどコストもかけずにすむ。同記事によれば、営業利益のうち、テーマパーク事業の構成比は実に86%(09年3月期)といい、顧客1人当たりの平均売上高は9473円。そのうち商品売上高は3195円(09年4~9月期)と、およそ3分の1を占めるというから、売上=客数×客単価という単純な図式で考えれば、人気グッズが登場すれば、全体の売上、利益へのインパクトは非常に大きい。
同一の商品の買い換え、もしくは買い増しを促進することを「アップセリング」という。かつて、デルコンピューターは4年間で3台PCを買わせるというプログラムを展開していたという。デスクトップを買う。しばらくすると、ノートPCの買い増しのお勧めが来る。その後しばらくすると、デスクトップの買い換えのお勧めが届く。
とはいえ、そんなに簡単に買い増し・買い換えをしてくれるものではないが、ディズニーは易々とそれをやってのけた。ダッフィーとシェリーメイは別商品であるが、ファンでなければ同じクマのバリエーションだ。デスクトップとノートの違いぐらい。ゆえに、これはアップセリングである。それも、とびきり勝率の高い。
関連商品の販売を「クロスセリング」という。例えばヒューレット・パッカード(HP)では、同社はプリンタも製造しているので、もれなくパソコンとの併買のお勧めがくる。
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