微積分を知らない人が「損している」と言える訳 科学技術の多くは数学で「経験と勘」を凌駕した

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では、車両が区間の起点を通過するときの正確な速度を知りたい場合はどうだろう。速度表示板の計算で生じるわずかな誤差でさえ許されないとしたらどうするか。計算の精度をさらに上げるには、距離をもっと短くする必要がある。ここまで来れば、「無限」の概念も近い。区間を無限に小さくすることで、無限に精度を上げられる、つまり正確な結果が得られるというわけだ。

「明日は晴れ」の信頼性

「明日はよいお天気になるでしょう」は、本当だろうか? 天気予報が当たらないというのは、以前は常識だった。しかし、天気予報に微積分が使われるようになってからは変わってきている。大型コンピューターで計算が処理できるようになったおかげで、天気予報の精度は飛躍的に向上した。1970年代の予報と比べれば驚くほどの正確さだ。

数値計算に基づく予測が取り入れられるまで、天気予報の手順はシンプルだった。

(1)窓の外を見て、雲の様子や温度などを観察する
(2)今日と同じ天気の日を過去の記録から探す
(3)過去に同じ天気だった日の翌日の天気の記録が、明日の天気予報となる

この予報では、今日の天気は昔のある日の天気とまったく同じで、明日以降も過去の記録と同じように推移することを前提にしている。だが雲の様子と温度だけを考えてみても、まったく同じ日があるとは考えにくい。天気はもっと複雑なものだし、これでは予報がなかなか当たらないのも無理はなかった。

天気についても「計算して予測する」ことはもちろん可能だ。気象、つまり大気の状態の変化は、微積分を使うととらえやすい。第1次世界大戦のさなか、イギリスの数学者ルイス・リチャードソンは、計算に基づく天気予報を思いつき、過去のデータから、ある日の6時間後の天気を予測してみることにした。もっともこの計算には6週間もかかり、試みは失敗に終わった。

計算で予報を出すのは、昔も今もかなり難しい。リチャードソンの場合は、時間がかかったばかりか、いくつも誤りがあった。天気には変化する要素がとても多い。大気は移動し、気温や湿度など、さまざまな数値に影響を及ぼす。高気圧と低気圧の位置関係やその動きも、大気圏のほぼ全体にわたって把握しておく必要がある。ほんの小さな変化でも、大きな違いにつながるからだ。

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