施:中国など日本以外の東アジア、東南アジア諸国では、「デジタル権威主義」的手法というか、個人情報の保護など無視して、テクノロジーで管理してコロナを封じ込めていくやり方が採られました。中国は一時それでコロナの封じ込めに成功して、「欧米の自由民主主義よりも、中国のデジタル権威主義のほうが優れている」と言わんばかりの宣伝をしていましたね。
日本は憲法の縛りもあって、法律に基づく罰則を課すこともできず、デジタル権威主義的な統制もできず、結局は国民の規律意識や伝統的な衛生観念といった「文化的なもの」「共同体的なるもの」に頼ることになりました。世界的な調査を見ると、政府のコロナ対策に対する信頼度は、日本が主要国の中でいちばん低かったらしいですね。
ところがふたを開けてみたら、人口当たりのコロナの感染者の割合や重篤化した患者の割合という指標では、日本の成績は非常によかった。これも実に日本的というか、「政府のリーダーシップにはさほど期待できないけれども、国民の自発的な協調性や高い規範意識のおかげで対処できた」という形ですね。
ロックダウンを解除せざるをえなかったヨーロッパ
中野:日本がなぜ第1波をそこそこコントロールできたのかは、いまだに不明だったりもしますね。
おそらく新型コロナウイルスの情報がはっきりしなかったから、対策も国によって違ってきたんでしょう。今振り返ると、新型コロナウイルスの脅威自体が、アジアとヨーロッパ、アメリカで全然違っていた。ウイルスもナショナリティーを帯びているなという気がちょっとしますね(笑)。
柴山:ヨーロッパでもスウェーデンのようにロックダウンを採らなかった国もあって、よくスウェーデンの政策が正しかったのか、間違っていたのかという話が出ます。最初、死者数が増えたので批判する人が多かったのですが、経済まで含めて長い目で見たらわからないですね。それぞれの国の対策がどういう結果になるか、どの国のやり方が正解だったかということは、今の段階では断定できないでしょう。
ヨーロッパのコロナ対策で評価できるのは、早めにロックダウンを解除したことです。フランスはまだ感染者が1日600人も出て、死者も100人単位で出ているという状態でも解除している。
感染の波がピークアウトしたということもありますが、何よりロックダウンによる経済への影響がすさまじかったからでしょう。EUが100兆円規模の財政支出を決めたのも、これは大変なことになる、存亡の危機だということに気がついたからではないですか。
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