「専門家会議は経済無視」批判が誤っていた理由 「不確実性」が突出していた新型コロナ危機

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中野:専門家会議を批判するのだったら、「医療のキャパは余裕で、医療崩壊の心配などなかった」という証拠を示さなくてはいけない。ところが批判者たちは、「緊急事態宣言発出時では、すでに新規感染者数が減っていた」とか、的外れの議論ばかりしています。新規感染者数が減っていても、入院患者数が累積して増えていけば、医療機関はいっぱいになってしまうのに。

ロックダウンの経済への影響

柴山:新型コロナは初期の時点の不確実性が非常に高かったので、専門家会議も難しい判断を強いられたとは思います。

柴山 桂太(しばやま けいた)/京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門は経済思想。1974年、東京都生まれ。主な著書にグローバル化の終焉を予見した『静かなる大恐慌』(集英社新書)、エマニュエル・トッドらとの共著『グローバリズムが世界を滅ぼす』(文春新書)など多数(撮影:佐藤 雄治)

医療の専門家が集まる専門家会議が、「医療崩壊を起こさない」ことを目的関数に政策を提言すること、それ自体はいい。だけど、国家全体の方針としては、もっといろいろなことを考えなければいけなかったのではないか。

雑誌『フォーリン・アフェアーズ』に、世界で30億人がロックダウンなどで外出制限の状態にある、という記事が出ていました。これだけの人口が、何カ月という単位でステイホームを強いられたというのは、人類の歴史でも前例がない。僕は個人的には、コロナ対策で世界各国がロックダウンに走ったことには疑問を持っています。

施光恒(以下、施):それはどういった理由からですか。

柴山:現代経済は高度に専門分化した分業の体制です。フリードリヒ・ハイエクの言うように有機的な秩序になっていて、いろんなものが複雑につながった生態系のようになっている。そこで全体の動きを何カ月も止めてしまうと、予想もつかないような破壊が次々に起きかねない。

日本の失業者はおよそ200万人ですね。緊急事態宣言が実施された4月は、職場から給料はもらっているが仕事は休んでいる休業者が600万人も出ました。仮にすべて失業者となっていたら、失業率は11%、リーマン・ショックのときの2倍になっていた。わずかひと月の自粛で大量の失業者が出てもおかしくない、それぐらいのすさまじい破壊力があるんです。

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