「専門家会議は経済無視」批判が誤っていた理由 「不確実性」が突出していた新型コロナ危機

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中野:かつ、言葉のインパクトで行動変容を促さないといけないので、あえてコロナの脅威を強調せざるをえなかった。そうやって、擬似ロックダウン状況を作ろうとしたわけです。

佐藤 健志(さとう けんじ)/評論家、作家。1966年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』(1989年)で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞。『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋、1992年)以来、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。主な著書に『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『右の売国、左の亡国』(アスペクト)など。最新刊は『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)(写真:佐藤 健志)

どれも必要があってやっていたことなのに、それに対して「大げさなことを言って不安をあおっている」などと、「不確実性」という状況もわきまえずに無責任な批判をする自称専門家たちがかなり出てきた。

佐藤:自粛や予防を呼びかけたところで、実際の達成率はせいぜい6割ぐらいと見なくてはならない。となると、現実に(例えば)100の結果を出すためには、どれくらいのレベルの自粛や予防を呼びかける必要があるか。100を0.6で割れば、約167です。つまり7割増しぐらいに厳しくしておいて、ようやく目標が達成される。これを大げさと批判するのは、人間社会の何たるかがわかっていないことの告白にすぎません。

中野:専門家会議を批判した人たちの中には、楽観論に立って「集団免疫戦略でいいんだ」と言っていた者もいた。しかしそれをやったイギリスがどうなったか。感染者が激増したために、あわてて方針転換したが時すでに遅く、首相自身がコロナにかかって入院する事態になった。

医療崩壊はギリギリだった

中野:専門家会議では、その目標を明確に決めていました。具体的には「医療崩壊を起こさないこと」で、重症者の数とか死者の数とか、オーバーシュートの防止ではなく、医療という堤防を決壊させないことを主眼にしていた。

医療崩壊の危険があるかどうかは、ベッド数の余裕や各地の病院からの報告を聞いていればわかる。4月には医療崩壊ギリギリで、危なかったと言われています。しかし医療機関が「このままだと崩壊する」と必死で訴えているのに、楽観派は「重症化するのは高齢者や基礎疾患の持ち主だけ」「まだ数百人しかかかっていない」というレベルの議論で、専門家会議を批判していた。

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