五大商社で唯一赤字、住友商事に山積する課題 不振が続くニッケル事業を立て直せるのか

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アンバトビー事業のほかに懸念されている減損は、例えばインドの特殊鋼事業がある。自動車製造向けの特殊鋼事業で工場はロックダウン(都市封鎖)によって操業を停止していた。足元では操業を再開しているが、本格稼働には至っておらず、インド経済の回復状況によっては減損が発生する可能性がある。

ヨーロッパやアメリカで青果事業を展開するファイフス社もコロナ影響が直撃した。アメリカ国内での外出規制影響で飲食店や量販店向けの販売が落ちている。今後の業績次第ではのれん減損に至る可能性がある。

住友商事の収益構造は景気変動に左右されやすい。1990年代後半から部品製造や完成車事業に投資し、製造分野に乗り出した輸送機・建機事業でも、コロナ影響を強く受け、第1四半期に94億円の赤字を計上した。金属、輸送機・建機、資源・化学品の3セグメントは「世界の経済活動がストップする中、非常に影響を受けやすい」(兵頭社長)。

懸念案件は今年度に目処をつける

景気変動の影響を受けやすい3セグメントの改革や減損が懸念されるような事業への対応は、住友商事にとって喫緊の課題だ。そして、不採算事業について、「今期中に懸念案件に目処をつける」(菅井主計部長)とし、2020年度中に膿を出し切る考えだ。事業撤退などを含めた改革にどこまで実行に移せるか。残された時間は少ない。

2018年から指揮を執る兵頭社長。業績が悪化する中でどのような手を打つのか。写真は2018年(撮影:今井康一)

いくつもの課題がある中、兵頭社長は「メディア・デジタル、生活・不動産、インフラ関連を拡充して、稼ぐ力の強化に取り組む」と、ポートフォリオの改善に意欲をみせる。

住友商事は約30年前からポートフォリオの多様化を進め、発電事業などを手掛けるインフラ、ケーブルテレビやシステム開発など行うメディア・デジタル、スーパーのサミットや薬局のトモズなどを擁する生活・不動産の3セグメントを拡充してきた。この3セグメント合計の2021年3月期の最終利益予想は1050億円としている。今後も全体収益を底支えする事業として、一層強化する算段だ。

2022年3月期からは次期中期計画がスタートする。兵頭社長は複数の懸念案件にメスを入れ、抜本的な改革をどこまで具体化できるかが問われることになる。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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