五大商社で唯一赤字、住友商事に山積する課題 不振が続くニッケル事業を立て直せるのか

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ニッケル採掘から精錬までを一貫して手掛けるプロジェクトで、年間5万トンという世界最大級の生産量を目指す。だが、コロナによりマダガスカルで外出規制が行われた影響で、3月末から操業停止を迫られた。

また、ニッケル価格の下落見通しもあり、アンバトビー事業は第1四半期に約550億円の減損を計上。第2四半期以降も、「操業停止期間の長期化など、事業環境のさらなる悪化により追加の減損が発生する可能性がある」(兵頭社長)としている。

住友商事がプロジェクトに参画したのは2005年のこと。アンバトビーはバッテリー向けに高品質のニッケル地金を生産できる。併せて、バッテリーに使うコバルト(年間0.5万トン)も産出する。電気自動車普及などの将来需要をとらえての投資だった。

だが、プロジェクトはスタートから厳しい局面が続いている。当初、2010年後半としていた生産開始時期は工事遅延の影響で遅れ、2012年に生産を開始。この遅れから、完工までの事業費も当初計画の倍近い72億ドル(7700億円)に膨れあがった。

プロジェクトの重要なパートナーが撤退

アンバトビーは生産開始後も設備トラブルや操業員のスキル不足で稼働率は上がらず、赤字を垂れ流し続けている。累計減損額は1518億円にのぼり、住友商事にとって最大の経営課題になっている。

2019年11月にニッケルプラントのメンテナンスを行い、操業は改善の兆しを見せつつあったが、そこにコロナが猛威を振るい、操業停止に追い込まれた。今後は操業をいつ再開できるか、どこまで生産量を上げられるかが焦点となるが、現地のコロナ収束時期は不透明だ。

さらにプロジェクトの根幹を揺るがす事態も起きた。アンバトビーは、住友商事とカナダの資源開発会社シェリットインターナショナル、韓国のコレス社の3社によって推進してきたプロジェクトだったが、このうちシェリット社が事実上、撤退する見通しとなったからだ。

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