五大商社で唯一赤字、住友商事に山積する課題

不振が続くニッケル事業を立て直せるのか

アンバトビーのプロジェクトを推進する各社は、持ち分に応じて事業に必要な資金を拠出することになっている。シェリット社はオペレーター(操業主体)を務める中核的な存在だが、近年は財務悪化のために資金を拠出できず、住友商事やコレスに肩代わりしてもらっていた。

そうした中、7月23日(現地時間)にシェリット社は債務整理計画について債権者の89%の賛成を得たと公表した。これに伴い、住友商事のシェリット社に対するローン債権とシェリット社のアンバトビーへの持ち分の一部を交換する。これで住友商事の持ち分比率は54.17%(現在、47.67%)へと増える見込みだ。

今後の事業運営について、住友商事の菅井博之主計部長は「従前よりシェリット社に頼らず操業できる組織づくりを進めており、日々の生産で生じる影響はない」と決算会見で説明した。住友商事はアンバトビーの操業再開時期の前提を2021年1月~3月としている。実際にこのタイミングで操業を再開できるかどうかは大きなポイントだ。

従来の事業モデルから転換

アンバトビー以外では、金属部門も2020年4月~6月期の純利益が9億円(前年同期は60億円)へ急減した。中でも減速が著しいのが北米鋼管事業だ。日本製の高品質の鋼管をオイルメジャーなどの石油・ガス開発向けに販売する事業で、同社の歴代社長の多くが鋼管事業に携わっており、住友商事では花形部門と位置づけられてきた。

原油価格が上昇して、顧客の石油・ガス開発が活況となれば追い風になる。しかし、コロナ影響による需要減少などから、原油先物価格(WTI)は4月に史上初となる1バレル=マイナス37.63ドルをつけた。足元は1バレル=40ドル程度まで回復してきているものの、オイルメジャーの財務状況は苦しく、開発投資を減らしている。

住友商事の北米鋼管事業の不振は顧客の苦境を映したものだ。従来は多くの在庫を抱えて、顧客ニーズに合わせてすぐに鋼管を提供することで収益を上げてきた。だが、こうした事業モデルが行き詰まっており、「今後は大量の在庫を抱える事業モデルではなく、付加価値の高い事業に経営資源をシフトする」(兵頭社長)としている。

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