「部活クラスター」と大騒ぎの人々に映る深い闇 誰が感染してもおかしくないのに責めてどうする

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その他にも、国が経済回復策として「Go Toトラベル」を推奨していること。それ以前に、コロナ禍においても人の行動に制限をかけることは難しく、学生の世代はなお困難であること。どんなに感染対策をしている人でも、自分が感染したり、誰かを感染させたりする可能性をゼロにはできないこと。どう考えても、「学校や部の感染対策が甘かった」というだけで断罪していい理由にはならないのです。

サッカー・本田圭佑の熱い言葉

元サッカー日本代表で現在はブラジルのボタフォゴでプレーする本田圭佑選手は自身のツイッターに、「立正大淞南高校、及びサッカー部の皆さん、コロナ感染に関して謝罪する必要なんてないよ。対策してても感染する確率を0にはできんから。それより熱とか体は大丈夫?今はしっかり食べて休んでな。また治ったら夢に向かって頑張れ。非難してる人だけでなく、心配してる人も沢山いることを忘れんといて」とつづりました。

誰かを責めるのではなく、心身を気づかうという姿勢を見せていたのです。もともと「利害関係の薄い人を責める」という行為は、不安や恐れの表れにほかなりません。「いつどこで感染するかわからない」という不安や恐れは理解できますが、その「ネガティブな気持ちを誰かにぶつけていい」というわけではないでしょう。

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感染者や関係者を責める世の中では、「感染を隠したい」という気持ちが芽生えたり、「自分は多分感染していない」と思い込んだりなどして、重症化や感染拡大につながりかねません。新型コロナウイルスに感染した人も、仕事や生活にダメージを受けている人も、そうでない人がそろそろ気づかえるような世の中にならなければ、ますます生きづらい日々になっていくでしょう。

よほどの悪意のある人を除き、もう新型コロナウイルス関連で誰かを責めるのは、やめるべきタイミングなのかもしれません。今、誰かに批判の声をあげている人も、「以前より自分が感染しても不思議ではない状況になっている」ことに気づいているのではないでしょうか。そんなフェーズに入っているからこそ、エキセントリックに誰かを責めるのか、それとも気づかえるのか。1人ひとりの人間性が問われているのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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